研究課題/領域番号 |
20H04538
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
相澤 守 明治大学, 理工学部, 専任教授 (10255713)
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研究分担者 |
金子 弘昌 明治大学, 理工学部, 専任准教授 (00625171)
松本 守雄 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 教授 (40209656)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | バイオセラミックス / アパタイト / テーラード人工骨 / 骨形成率 / 機能予測 / 計算科学 |
研究実績の概要 |
本研究では、バイオマテリアルのなかで「人工骨」などとして臨床応用されている「バイオセラミックス」をベースとし、生命現象に積極的に働きかける「生命機能マテリアル」を実験と計算科学の融合により開発する。ここでは、生体骨を直接結合する「水酸アパタイト(HAp)」および生体内で吸収置換される「リン酸三カルシウム(TCP)」を対象とする。 より具体的には、実験系研究者からの良質な実験データおよび機械学習などにより収集した情報をもとに「生命機能推定モデル」を構築する。そのモデルを逆解析することにより創り出される「設計図」をもとに生命機能を自在に制御した「革新的バイオマテリアル」を創出する。本研究で対象とする「生命機能」は、骨形成能・生体吸収性・耐感染性(抗菌性)・血管形成能の4つであり、材料単独での高いパフォーマンスを発揮しうる「テーラード型人工骨」を開発し、我が国の「健康寿命の延伸」に貢献する。 2021年度は、2020年度の繰り越し分を活用して、材料特性を十分に把握した人工骨材料の骨形成率を画像解析により定量化し、良質なデータを新たに収集した。それらのデータを特徴量Xおよび目的変数Yとして、骨形成能を予測する「テーラード人工骨創製に資する生命機能予測モデル(Y=F(X))」の構築に成功した。また、2021年度の後半には、このモデルの逆解析により提示された作製条件での材料合成も手掛けている。2022年度は計算結果の予測精度と実際の実験結果(材料特性や生物学的特性)との整合性を向上させる取り組みを推進し、骨形成予測モデルの逆解析による設計図を活用したテーラード型人工骨を創製し、その機能評価を実施する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的を達成するため、材料系グループと計算系グループとの協働により、以下の4つの研究課題:1)入力データとなるモデル材料の創製と材料特性、2)モデル材料の生物学的評価、3)テーラード人工骨創製に資する生命機能予測モデルの構築、4)計算科学を導入したテーラード人工骨の創製とその評価を併行して推進している。 2021年度は、2020年度に引き続き、1)および2)の課題を推進して、材料特性を十分に把握した人工骨材料を創製するとともに、その骨形成率を画像解析により定量化し、良質なデータを新たに収集した。それらのデータを特徴量Xおよび目的変数Yとして、計算系グループに提供し、骨形成能を予測する「テーラード人工骨創製に資する生命機能予測モデル(Y=F(X))」の構築に成功した。また、2021年度の後半には、このモデルの逆解析により提示された作製条件での材料合成も手掛けている。さらに、得られた研究成果を日本バイオマテリアル学会大会で口頭発表したところ、多くの方々から質問があり、当該研究が大いに注目されていることも明らかになった。 2022年度は計算結果の予測精度と実際の実験結果(材料特性や生物学的特性)との整合性を向上させる取り組みを推進する。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は、これまでの研究成果に立脚し、骨形成予測モデルを活用した「テーラード人工骨」の創製に取り組む。より具体的には、計算科学グループの理論計算の基礎となる適切な「数値データ(特徴量X)」を求めるため、材料創製において、次の3つの制御技術:1) 異方性制御、2) 微細構造制御、3) 化学組成制御を駆使し、好適なモデル材料を創製し、その材料特性を明らかにする。材料の素材として、生体内で直接化学的に結合する水酸アパタイトおよび生体内で吸収置換されるリン酸三カルシウムを使用する。また、「モデル材料を利用した生物学的評価」では、骨芽細胞を用いて創製したモデル材料のin vitro評価を実施し、その細胞増殖性や形態、細胞分化などを明らかにする。なお、ここで得られる数値データもまた計算系グループが使用する「特徴量X」となる。また、実験動物を用いて創製したモデル材料のin vivo評価を実施し、インプラント周囲の生体内反応を組織学的に評価し、その骨伝導能や生体吸収性を明らかにする。なお、組織学的評価により得られる骨形成率や生体吸収率などの数値データは計算系グループが使用する「解Y」となる。これらのXとYを利用して生命機能推定モデル「Y = f(X)」を構築する。 2021年度までの取り組みで、骨形成能を予測する「テーラード人工骨創製に資する生命機能予測モデル」の構築に成功し、逆解析により提示された作製条件での材料合成も手掛けている。2022年度は、そのモデルを逆解析することにより計算系グループから提示される自在に骨形成率を制御できる人工骨の作製条件をもとに材料の作りこみを行なう。特に、本年度は計算結果の予測精度のさらなる向上と実際の実験結果(材料特性や生物学的特性)との整合性を向上させる取り組みを推進し、2023年度以降に向けて、患者個人のニーズに合致した特性を持つテーラード人工骨の創製へ足がかりをつくる。
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