研究課題/領域番号 |
20H04539
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
宮田 隆志 関西大学, 化学生命工学部, 教授 (50239414)
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研究分担者 |
岩崎 泰彦 関西大学, 化学生命工学部, 教授 (90280990)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 刺激応答性高分子 / 細胞 / メカノバイオロジー / 動的架橋 / 時空間制御 |
研究実績の概要 |
本研究では,動的架橋戦略に基づき,刺激に応答して物理的・化学的性質を変化させる3種類の刺激応答性高分子(1)光・温度応答性ゲル,2)光・生体分子応答性ゲル,3)光応答性フィルム)を設計し,その材料表面(2D培養)やゲル内部(3D培養)を用いた時空間制御型細胞培養システムの構築を目指している。本年度の研究実績を以下にまとめる。 1)光・温度応答性ゲルの設計:光二量化基を有するモノマーとポリエチレングリコール(PEG)メタクリレートとの共重合により,下限臨界溶液温度(LCST)を有する光二量化基導入PEG誘導体を合成した。粘弾性測定により,光照射により光二量化基導入PEG誘導体の水溶液がゾル-ゲル相転移することを明らかにした。さらに,光照射条件によって弾性率の異なる光・温度応答性PEGゲルの調製に成功した。 2)光・生体分子応答性ゲルの設計:まず,光二量化基としてマレイミド基を有するPEG誘導体にビオチンを導入することにより,光二量化基・ビオチン含有ポリマーを合成した。また,光二量化基を有するアントラセン誘導体から原子移動ラジカル重合により親水性モノマーを重合し,さらに側鎖糖含有モノマーを重合して,光二量化基・糖鎖含有ポリマーも合成した。 3)光応答性フィルムの設計:数十MPaオーダーの弾性率をもつフィルム表面での細胞挙動を調べるため,光二量化基を有するモノマーとポリジメチルシロキサン(PDMS)マクロモノマーとの共重合により,光二量化基導入PDMS誘導体を合成し,キャスト法によって光応答性フィルムを調製した。フォトマスクを通して光二量化基導入PDMS誘導体フィルムにUV光照射すると,フォトマスクに応じた弾性率パターンの表面が形成されることを明らかにした。様々な方法によりフィルム表面の化学的・物理的性質を検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では,細胞制御するための主に3種類の刺激応答性高分子(光・温度応答性ゲル,光・生体分子応答性ゲル,光応答性フィルム)を設計する予定である。新型コロナウイルス感染症の影響で一時研究のスピードも遅くなったが,予定していた研究項目はある程度遂行することができた。現段階では,予定していた3種類の刺激応答性高分子の合成が順調に進んでいるため,「(2)おおむね順調に進展している」と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
刺激に応答して物理的・化学的性質を変化させる3種類の刺激応答性高分子の設計と細胞制御に関する今後の研究の推進方策を以下にまとめる。 1)光・温度応答性ゲルの設計と細胞制御:引き続き,下限臨界溶液温度(LCST)を有する光二量化基導入PEG誘導体を合成し,光照射や温度変化による光・温度応答性PEGゲルの弾性率と親水性・疎水性の変化を調べる。さらに,様々な弾性率や親水性・疎水性を有するゲルの表面で細胞培養し,その接着や伸展,増殖,分化などの細胞挙動を調べる予定である。 2)光・生体分子応答性ゲルの設計と細胞制御:分子複合体形成部位と光二量化基を導入したPEG誘導体と生体分子(アビジン,レクチン)とから四分岐構造の分子複合体を形成させた後,光照射によるゾル-ゲル相転移挙動と標的分子添加によるゾル化挙動を検討する。さらに,細胞存在下で同様に光・生体分子応答性ゲルを形成し,ゲル内部での細胞挙動を調べる予定である。 3)光応答性フィルムの設計と細胞制御:引き続き,光二量化基導入PDMS誘導体を調製し,フォトマスクを通した光照射により様々な弾性率パターンの表面を形成する。次に,光照射によるフィルム表面の物理的および化学的な性質の変化を詳細に調べる。さらに,このパターン化フィルム表面上で細胞培養し,その接着や伸展,増殖,分化などの細胞挙動を調べる。
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