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2020 年度 実績報告書

歯周病治療革新のための歯界面反応の光制御と歯面高機能化

研究課題

研究課題/領域番号 20H04541
研究機関国立研究開発法人産業技術総合研究所

研究代表者

大矢根 綾子  国立研究開発法人産業技術総合研究所, 材料・化学領域, 研究グループ長 (50356672)

研究分担者 宮治 裕史  北海道大学, 大学病院, 講師 (50372256)
研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2023-03-31
キーワードレーザー / アパタイト / リン酸カルシウム / 過飽和溶液 / 成膜 / 歯 / コーティング / 抗菌
研究実績の概要

本研究は、歯周外科治療後の歯面改質への応用を志向し、抗菌性と生体親和性を併せ示す抗菌アパタイトを、歯質(象牙質)の表面に迅速成膜する技術を確立することを目的とする。当該年度は、抗菌成分としてフッ素を用い、ヒト象牙質基材の表面にフッ素含有アパタイトを成膜するための過飽和液中レーザー照射法の研究開発を進めた。ヒト象牙質基材は、インフォームドコンセントの後、本来廃棄される歯牙の提供を受けて作製した。同基材を、フッ化ナトリウムを適量添加したリン酸カルシウム過飽和溶液中に設置し、その表面に種々の条件でレーザー光を照射した(過飽和液中レーザー照射法)。レーザー光源としては、これまでの研究で使用してきたNd:YAGナノ秒パルスレーザーに加え、医療機器として認可を受け臨床使用されている歯科用半導体レーザー実機を用いた。
Nd:YAGナノ秒パルスレーザー(355 nm)を用いた検討では、レーザー照射時間を変化させて、照射面の構造変化を調べた。その結果、照射5分後にはフッ素含有アパタイトナノ結晶が象牙質基材の表面に析出しはじめ、それらがc軸方向に伸長することで、照射30分後にはフッ素含有アパタイトの柱状結晶からなるミクロン厚膜へと成長することが分かった。また、抗菌性試験の結果、フッ素含有アパタイト成膜(照射時間:30分)によって、う蝕原因菌(Streptococcus mutans)に対する抗菌作用を象牙質基材に付与できることを確認した。
半導体レーザー(808 nm)については、象牙質基材との反応性を高めるため、光吸収剤(歯垢染色剤、シアニン色素系診断薬等)による基材の前処理について検討を行った。その結果、象牙質基材の表面にシアニン色素系診断薬を塗布することで、成膜に必要な光吸収性を付与できることを確認した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

交付申請時の実施計画書に従い研究を進め、上記の通り、概ね期待通りの成果が得られている。Nd:YAGナノ秒パルスレーザー(355 nm)を用いた検討では、照射5分以内に、ヒト象牙質基材の表面にフッ素含有アパタイトナノ結晶が析出することを確認し、論文発表を行ったほか、2021年度に複数の学会等で成果発表を予定している。半導体レーザーを用いた検討では、象牙質基材に有効な前処理条件を見出し、認可済み歯科用半導体レーザー実機を本成膜技術に適用できることを確認した。

今後の研究の推進方策

2020年度の検討結果に基づき選定されるシアニン色素系診断薬(認可済み医薬品)を用い、認可済み歯科用半導体レーザー実機を用いた成膜技術開発を進めていく。照射条件(エネルギー密度・照射面積等)の検討・最適化を進めるとともに、前処理なしの基材等を用いた比較実験を進め、反応機構についても追及していく。さらに、成膜の効果を実証するためのin vitro・in vivo試験についても進めていく(in vivo試験についてはまず、実施前に必要となる倫理委員会への計画承認申請の手続きを行う)。ヒト象牙質基材の使用にあたっては、産業技術総合研究所および北海道大学の倫理委員会による審査を経て承認された計画に従い、関連法規や指針、両機関のガイドライン等を遵守して研究を実施する。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2021 2020 その他

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 1件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Formation of a calcium phosphate layer immobilizing cobalt chromite nanoparticles on cobalt-chromium alloy by a laser-assisted biomimetic process2020

    • 著者名/発表者名
      A. Oyane, I. Sakamaki, K. Koga, M. Nakamura
    • 雑誌名

      Appl. Sci.

      巻: 10 ページ: 5584-5596

    • DOI

      10.3390/app10165584

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Antibacterial tooth surface created by laser-assisted pseudo-biomineralization in a supersaturated solution2020

    • 著者名/発表者名
      A. Oyane, I. Sakamaki, K. Koga, M. Nakamura, K. Shitomi, H. Miyaji
    • 雑誌名

      Mater. Sci. Eng. C

      巻: 116 ページ: 111170-111180

    • DOI

      10.1016/j.msec.2020.111170

    • 査読あり
  • [学会発表] 過飽和液中レーザープラズマ処理による高機能化歯面の構築2021

    • 著者名/発表者名
      大矢根綾子
    • 学会等名
      第38回プラズマプロセシング研究会(SPP-38)/第33回プラズマ材料科学シンポジウム(SPSM33)
    • 招待講演
  • [学会発表] 過飽和液中レーザー照射法による象牙質表面へのフッ素担持アパタイト成膜と抗菌特性2020

    • 著者名/発表者名
      蔀佳奈子、宮治裕史、菅谷勉、古賀健司、中村真紀、大矢根綾子
    • 学会等名
      日本歯科保存学会2020年度春季学術大会(第152回)
  • [備考] 大矢根の研究

    • URL

      https://staff.aist.go.jp/a-oyane/index.html

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公開日: 2021-12-27  

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