研究課題/領域番号 |
20H04544
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
鶴岡 典子 東北大学, 工学研究科, 助教 (70757632)
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研究分担者 |
芳賀 洋一 東北大学, 医工学研究科, 教授 (00282096)
永富 良一 東北大学, 医工学研究科, 教授 (20208028)
川副 友 東北大学, 医学系研究科, 助教 (70405421)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 微小還流針 / 乳酸センサ / 連続計測 |
研究実績の概要 |
本研究では、皮膚微小還流を応用し、乳酸濃度の連続測定を可能とする。さらに、これまで数分毎の計測からしか推定できなかった、マウスおよびヒト運動時の乳酸濃度動態を明らかとすることを目的として研究を進めている。 開発する乳酸計測システムは、極細径で痛みのない針を1 mm程度の浅い皮膚に刺入しただけで計測が可能なため、生活習慣病予防のための運動の習慣化に役立つだけでなく、術後の虚血モニタや敗血症の兆候モニタなどにも応用が期待される。 本研究では、非観血的な乳酸連続計測を目指し、皮膚微小還流による計測システムを完成させ、運動時の乳酸濃度動態を明らかとする。具体的には ①連続乳酸計測システムの作製と性能評価、② マウス腹腔乳酸投与前後での乳酸濃度変動計測による血中乳酸濃度との相関性評価、③ マウス運動時の連続乳酸濃度計測、④ ヒト運動時の乳酸濃度計測の4つの項目を行っていく。これと同時に、運動負荷計測の応用だけでなく、虚血のモニタや敗血症防止、筋中乳酸計測への応用など本研究の展開を模索する。 本年度はこれらの中で①連続乳酸計測システムの作製と性能評価について引き続き開発を進めた。従来作製してきたシステムでは、還流の際に気泡混入が問題となっており連続的な測定が実現できていなかった。当該年度では、これらの気泡混入の条件を明らかとし、前年度問題であった気泡除去の際の流速変化を改善できる、気泡除去機能付きセンサ部を完成することができた。今後はこのセンサ部を用いた連続的な濃度変化の計測を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では、非観血的な乳酸連続計測を目指し、皮膚微小還流による計測システムを完成させ、運動時の乳酸濃度動態を明らかとする。具体的には ①連続乳酸計測システムの作製と性能評価、② マウス腹腔乳酸投与前後での乳酸濃度変動計測による血中乳酸濃度との相関性評価、③ マウス運動時の連続乳酸濃度計測、④ ヒト運動時の乳酸濃度計測の4つの項目を行っていく。これと同時に、運動負荷計測の応用だけでなく、虚血のモニタや敗血症防止、筋中乳酸計測への応用など本研究の展開を模索する。計画では、本年度までに①連続乳酸計測システムの作製と性能評価を完了し、② マウス腹腔乳酸投与前後での乳酸濃度変動計測による血中乳酸濃度との相関性評価および③ マウス運動時の連続乳酸濃度計測に進む予定であった。 本年度はこれらの中で①連続乳酸計測システムの作製と性能評価について開発を完了した。従来作製してきたシステムでは、微小還流針や流路接続部などから還流液に気泡が混入してしまうため、センサ測定値にドリフトが生じ正確な連続濃度計測が困難であった。このため昨年度は、乳酸濃度酵素電極に気泡除去機構を一体化したセンサを作製してきたが、除去時にセンサ上の流速が変化してしまうため、測定値に影響が出る可能性があることが明らかとなった。本年度はこの解決のため、気泡をバイパスする形でセンサ上流速が変化しない新たな構造の気泡除去流路を完成した。それとともに、これまでプッシュプルポンプで駆動を行ってきた微小還流針を含めたシステムはプルのみの駆動でも駆動可能であることが明らかとなり、今後のシステムの簡易化に役立つデータを得ることができた。 今後は完成したセンサ部を使用し、マウス皮膚中の乳酸濃度リアルタイム計測を実施し、その運動強度との相関性を評価するとともに、ヒト運動時の計測を目指す。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、非観血的な乳酸連続計測を目指し、①連続乳酸計測システムの作製と性能評価、② マウス腹腔乳酸投与前後での乳酸濃度変動計測による血中乳酸濃度との相関性評価、③ マウス運動時の連続乳酸濃度計測、④ ヒト運動時の乳酸濃度計測の4つの項目を行っていく。今後はこれらのうち以下の項目を実施する。 ② マウス腹腔乳酸投与前後での乳酸濃度変動計測による血中乳酸濃度との相関性評価:作製した乳酸計測システムを用いて、マウス腹腔乳酸投与時の乳酸濃度変動を計測する。これにより、微小還流により計測される乳酸濃度変動と血中濃度との相関性を確認する。具体的には、マウス背部に作製した針を刺入した状態で腹腔に投与した乳酸が代謝されていく様子を計測する。同時に3~5分毎に尾静脈採血により血中の乳酸濃度も計測し、その相関性を評価する。特に従来の10分毎の計測では、乳酸濃度が高い投与直後の計測値のばらつきが大きく、これが血中濃度との相関性を下げる要因であった。血中濃度がこの期間中に急激に下がっていることから、連続計測を実現することで微小還流でもこの急激な変化を計測でき高い相関性を得られると予想される。 ③ マウス運動時の連続乳酸濃度計測:マウス背部に作製した針を固定した状態でトレッドミルに乗せ、マウス運動中の乳酸濃度変化を計測する。運動強度を変化させた場合の乳酸濃度変化を計測し、運動強度のモニタとして使用可能かどうかを評価する。特に、マウスはヒトに比べて代謝速度が速いことが知られており、マウス運動時の乳酸濃度変化が運動強度と相関することが示せれば、作製した微小還流システムの測定速度は運動強度モニタに十分であるといえる。 ④ ヒト運動時の乳酸濃度計測:最終的には、エアロバイクによる運動負荷試験時の乳酸濃度モニタリングを目指す。特に、今後の実使用に向け、デバイスの安全性評価等を重点的に行う。
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