研究課題
2022年度までは、血管内皮細胞と微小気泡の凝集体が音響放射力によって流路(断面が1mm程度の矩形)内壁に捕捉され、さらにそのままの状態で(in situ)インキュベータ内で培養されることを確認できたものの、そのために必要な最適条件を見つけるには至らなかった。2023年度は超音波捕捉条件、および細胞の培養条件について検討し、超音波により人工血管を作製するために必要な条件の導出を試みた。これまでの超音波照射方法は、焦点サイズ3mm程度の集束超音波を流路内に形成、または流路内を移動させることで凝集体を捕捉していたが、そのような単純な照射方法ではなく、2次元アレイトランスデューサを用いた特殊な音場形成に取り組んだ。タイムリバーサル(時間軸反転)法と呼ばれる手法を導入し、通常の同心円状の超音波焦点ではなく、長方形の流路に合わせた長さ 10-20 mm、幅 3 mmの棒状音場を形成した。中心周波数3 MHz、Duty比60 %のバースト波を条件とし、60秒間音波を照射し、捕捉した後に流れを止め、細胞の捕捉面積を算出した。その後捕捉された細胞を培養し、培養後の細胞総面積を算出した。様々な音場形状について検討した結果、単焦点や移動焦点の条件に比べて、同じ音響強度の条件では、棒状音場の方が捕捉細胞数、および培養開始後24時間後の細胞数に有意のある増殖は見られた。これから、音響強度の平均値を一定にした場合、音響強度の分布が広範囲でかつ低密度である方が、補足から培養の一連の過程に適していることが確認された。さらに、平坦な流路内壁上に線維芽細胞(マウス3T3細胞)の基底膜を形成し、超音波により血管内皮細胞(ウシ由来)の凝集体を捕捉後、同様にin situ培養する異種細胞の多層共培養にも成功した。このように超音波で捕捉した細胞が異種細胞上で層を形成し、共培養が可能であることを確認した。
令和5年度が最終年度であるため、記入しない。
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Jpn J. Applied Physics
巻: 63 ページ: 04SP20
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