研究課題/領域番号 |
20H04550
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研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
大竹 義人 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 准教授 (80349563)
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研究分担者 |
平島 雅也 国立研究開発法人情報通信研究機構, 未来ICT研究所脳情報通信融合研究センター, 主任研究員 (20541949)
田中 康仁 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (30316070)
高尾 正樹 大阪大学, 医学系研究科, 講師 (30528253)
佐藤 嘉伸 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 教授 (70243219)
菅野 伸彦 大阪大学, 医学系研究科, 寄附講座教授 (70273620)
上村 圭亮 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 特任助教 (70871367)
SOUFI MAZEN 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 助教 (80823525)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 患者個別筋骨格モデリング / 四次元動態認識 / 人工関節患者 / X線動画像 / 非侵襲筋骨格動態計測 |
研究実績の概要 |
本年度は4つの小目的について、以下の通り研究を進めた。 1. 高忠実性筋骨格解剖バイオメカモデルの構築:弾性体シミュレーション用プラットフォームVIPER(Volume Invariant Position-based Elastic Rods)を用いて動作時の筋変形を予測するモデルを構築した。公開されている基本計算エンジンのコードを改良し、大・中・小殿筋の三つの筋肉について、CT画像から構築した患者個別の筋肉形状を周辺の骨とともに忠実に再現したモデルを構築した。 2. 医用画像データベースに基づく個体間解剖バリエーションの推定:前年度に構築した下腿部筋骨格(膝から足首まで)の手動抽出データセットを、研究代表者らが以前発表した手法[Hiasa et al. IEEE TMI2019]に適用し、下腿部筋骨格の自動セグメンテーションモデルを学習した。次に、骨盤・大腿部周辺、下腿部、足部といった部位別に学習したAIモデルを使って、下肢全体を撮影したCTボリュームから、下肢の全ての骨・筋肉を全自動で抽出する仕組みを構築した(論文執筆中)。 3. 筋骨格の動態変形バリエーションの推定:前年度に実験を進めた足部のCTとX線動画像から足根骨を含む複数の骨の三次元動態を認識するシステムの成果を整理し、医用画像のトップカンファレンス(MICCAI)にて発表するとともに、コードを公開した。また、モーションキャプチャデータを用いて歩行動作等の日常生活動作時の下肢全体の筋骨格動態をシミュレーションする実験を行った。 4. 筋骨格動態四次元認識AIの構築と医用画像を用いた評価:人工股関節設置前の患者の、股関節の動きを診断する目的で撮影された立位・臥位・外転位・内転位の4つの肢位のX線画像と同一患者のCTを約500患者分整理し、本システムの評価用データベースを構築した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
筋骨格の四次元認識システム構築に向けた一つのステップとして、低侵襲に撮影したX線投影像からの骨格の形状および動きの認識手法を確立し、医用画像のトップカンファレンス(MICCAI 2021)および対象読者層の広い高インパクト雑誌(Scientific Reports, IF: 4.379)に発表した。また、骨内部の強度分布を含む高忠実なバイオメカニクスモデル構築について整形外科医と検討する中で、派生的にアイディアが生まれたCT画像からの骨密度自動計測システムは、その臨床的価値とソースコードを公開した点を評価され、臨床系雑誌(Archives of Osteoporosis、IF: 2.617)に論文が採択された。さらに、弾性体シミュレータVIPERを用いた筋骨格シミュレーションの基礎検討や、足部までを含む下肢全体の筋骨格自動セグメンテーション、CT・MRIを用いた臥位・立位の筋骨格アラインメントの解析といった今後のプロジェクト進行の基盤となる研究成果について、8件の国内研究会(電子情報通信学会医用画像研究会)および学会(日本コンピュータ外科学会、日本医用画像工学会)で採択されたことから、おおむね順調に進展していると考える。 ただし、新型コロナウィルス感染症蔓延の影響で、昨年度後半に購入したマーカーレスモーションキャプチャシステム(Theia3D)での患者計測実験については進展が予定より多少遅れている。高尾・菅野(研究分担者)の協力により、大阪大学整形外科に機材を設置し、テスト撮影を行ったが、ボランティアのリクルートが予定通り進まなかったため、今年度は公開されているデータセット(CMU Graphics Lab Motion Capture Database)を用いて予備実験を進めた。来年度のできるだけ早い時期に、本格運用を開始し、患者の動作計測を開始する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
1. 高忠実性筋骨格解剖バイオメカモデルの構築:今後は、VIPERで用いられる円筒形オブジェクトの数・大きさ・配置を、患者個別の各筋肉の形状と線維走行の特徴に応じて最適化し、高忠実かつリアルタイムに駆動するバイオメカシミュレーションを実現する。 2. 医用画像データベースに基づく個体間解剖バリエーションの推定:今年度に引き続き、人工関節患者の術前・術後CTデータベースの整備を進める。既に整備が完了した1,600症例以上の下肢全体の術前CT画像に対し、深層学習を用いた筋骨格セグメンテーションを適用し、23種類(左右で46個)の筋肉および30種類(左右で59個)の骨の領域抽出を行い、三次元形状のポリゴンモデルを構築する。それぞれのCTに紐づいている年齢・性別データを用いて、男女別・年代別の個体間解剖バリエーションを表現した統計形状モデルを構築する。また、ほぼ全症例について人工関節設置手術後のCT画像も整備されているため、術前後の筋骨格解剖の変化を統計モデル化する手法の検討も進める。 3. 筋骨格の動態変形バリエーションの推定:マーカーレスモーションキャプチャシステム(Theia3D)を用いて人工股関節設置後患者の動作計測を行い、得られたデータから、歩行動作等の日常生活動作時の骨格の移動および筋変形をシミュレーションする実験を行う。従来法であるLBS(Linear Blend Skinning)法および提案法のVIPERによる変形シミュレーションを、CT画像から構築した患者個別モデルに適用し、結果を比較する。 4. 筋骨格動態四次元認識AIの構築と医用画像を用いた評価:上記1~3で構築した患者個別の解剖を反映したバイオメカニクスモデルとその動態、を含む学習データベースをもとに、患者のCTとX線動画像、あるいはビデオ画像から各時点での筋骨格の三次元形状を推論する深層学習モデルを構築する。
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