本提案では音響力学的療法(sonodynamic therapy:SDT)において抗腫瘍効果増大作用を示す薬剤の網羅的な探索研究を行う。SDTは高密度集束超音波(highintensity focused ultrasound: HIFU)と薬剤の相互作用を利用する方法であり、体内深部の低侵襲がん治療を目的としている。我々は既にDDS製剤(エピルビシンナノミセル)を用いたSDTの疾患動物治療や人に対する臨床研究を行っているが、SDTの作用機序自体は明らかでない部分が多い。本研究では難治性がんの代表である膵がん等で適用されている抗がん剤を中心に選定した薬剤に対し、HIFUとの相互作用によるマウスに対する腫瘍増殖抑制効果検証実験を行い、がんに対して有効な薬剤のスクリーニングを行うとともに、結果から推測される作用機序について考察を行い、SDTの効果に関する科学的な説明を試みる。 本年度はマウスに対して水槽内で集束超音波照射を行う実験系を構築した。加熱波、トリガー波の振幅と照射時間を調節できるコントローラを開発し、さらに超音波イメージングによるガイド機能を実装し、予備的な照射実験を行い、性能を確認した。また、摘出臓器をHIFUトランスデューサから一定距離に設置でき、さらに直径0.2mmの熱電対を焦点付近に10箇所設置できる治具を開発し、焦点付近の温度分布を計測できる実験系を構築した。この実験系を用い、摘出肝臓に対するHIFU焦点付近の正確な温度分布計測を行った。
|