研究課題/領域番号 |
20H04556
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
伊藤 悦朗 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 教授 (80203131)
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研究分担者 |
戸谷 勇輝 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 助手 (90843897)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | デングウイルス / 超高感度測定 / 早期診断 |
研究実績の概要 |
我が国でも今後増加すると予想さてる熱帯性感染症などの早期診断を確実に行うためには、検体から極微量の病原体成分を短時間で特異的に検出する超高感度検出法を開発する必要がある。これまでは病原体の核酸増幅法が最高感度として推奨されてきたが、今回の目的にはさらなる高感度化が必要となる。我々は、サンドイッチELISA法とチオNADサイクリング法とを組み合わせた「極微量タンパク質測定法」の原理を発明した。本研究ではこの原理に基づいた測定法を最適化することで、タンパク質を10^-20 moles/assayの超高感度で測定する世界初のシステムの構築を目指している。その適用例としてデング熱(デングウイルス)の早期診断システムの構築を試みている。本研究ではデング熱患者の血液のみならず、非侵襲的に採取できる尿や唾液でも測定可能な超高感度診断システムを開発することを目標としている。 2020年度は、我々の超高感度ELISA法を基に、デングウイルスNS1抗原を特異的に超高感度で検出するための至適条件を探索した。まず、NS1タンパク質を特異的に認識する抗体の入手に成功した。幸運なことに、我々の超高感度ELISA法に興味を示した抗体メーカーが、特異的抗体を提供してくれた。超高感度を達成するためには、他にも徹底した至適条件の探索が必要であった。酵素については、ALP(アルカリホスファターゼ)と3α-HSD(ヒドロキシステロイド脱水素酵素)を使用することにした。ALPについては市販品に最適なものをすでに見出していたが、3α-HSDについても同様に市販品の中から最高品質のものを見出すことができた。さらに、基質については、基本形はAndrosteroneであるが、その構造上の改良も試みている。これは酵素反応の効率の改善、ノイズレベルの低減のためであった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
一通りの実験手順が決まり、実験試薬の入手が可能となった。また患者検体の入手先も確保できた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、台湾・高雄医学大学から譲渡されるデング熱患者の血液・尿・唾液などの検体を用いて、我々の測定システムで検体内のNS1タンパク質が十分に測定可能かどうかを検証する。そして、これまでの経験を踏まえて添加回収試験も並行して行う必要があると考えている。つまり、血液・尿・唾液が、我々の測定システムにどれだけの阻害をもたらすかを調べ、その阻害効果を検体の希釈によって回避できるかどうか判断する。もしこの添加回収試験で十分に高い定量性が得られなかった場合には、希釈率には拘らず、ある閾値(カットオフ値)を設定することで、定性的な診断が可能かを検討する。血液検体については、特にWindow Periodとデングウイルス量との関係を調べる。 最終的により良い論文として公表するには、患者検体数を100以上は集めたい。これは台湾・高雄医学大学との共同研究ならば可能だと考えている。
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