研究課題/領域番号 |
20H04562
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
和田 正義 東京理科大学, 工学部電気工学科, 教授 (80406537)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | アクティブキャスタ / 車いす / 電動化装置 / 協調搬送 |
研究実績の概要 |
本研究では、利用者が手動車いすに座ったまま着脱が可能で従来のジョイスティック操作に加えて介護者による操作や、半自動操作などによる自在な動きを実現するために、手動車いすに後付けが可能な電動の駆動装置を開発することを目的としている。 アクティブキャスタと呼ぶ独自の駆動輪機構を用い、さらに差動駆動機構を適用することで、モータの稼働効率を高めている。しかしながら、操舵軸の動作が振動的になり、高速走行できなくなるという問題が生じた。これに対し新しい制御手法を考案した。そこでは、短時間先の操舵軸の挙動を予測し、制御入力を決定するものである。この制御方法を実装した結果、操舵軸の挙動が安定し、車いすの高速走行が可能になることを確認した。 また、パワーアシスト制御について、検出した操作力により、搬送物の3次元動作を生成する制御方式を検討し、台車形態の実験装置に実装、その効果を確認した。従来のパワーアシスト制御とは異なる台車の走行制御方式を考案した。そこでは台車制御装置内部に運動モデルを設定し、検出された操作力により運動モデルの挙動が計算される。その計算結果に合致するよう、実際の台車の運動制御を行う。この方法によれば、実際の台車の質量や粘性抵抗を変化させたような運動を実現することができ、台車に重い荷物を載せた場合でも、空の台車を押し引きするような感覚で台車を操作できることを確認した。 さらにこの駆動装置の応用展開として、複数の移動ロボットによる協調制御機能についても検討を行った。これは2輪駆動の移動ロボットを複数台用いて、大型搬送物を把持した状態で協調搬送により全方向移動を実現する。この制御方法を検討するためにシミュレーションを構築しその有効性を確認した。2台あるいは3台の移動ロボットによる全方向移動動作、および2台による搬送中に3台目のロボットが合流する動作ができることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2つのモータの動力を車輪軸、操舵軸の両方に伝達する差動駆動機構を採用したアクティブキャスタにて、操舵軸が振動的になるという問題が生じたが、操舵軸の挙動の予測を行う新たな制御手法を考案し、問題を解決できた。また、コンパクトなアクティブキャスタユニットの実現のために、DDモータを用いたアクティブキャスタユニット設計を行った。 パワーアシストに対しては、制御手法の検討を優先するため、ハンドル型の力測定装置を設計、試作し、このハンドルにより検出された操作力を用いた。その結果、従来のパワーアシスト制御とは異なる台車の走行制御方式の考案とその効果の実証ができた。将来的には、台車のどの部分に力を作用させても台車が動くことができるようにアクティブキャスタ車輪機構に力検出機能を統合することを検討する予定である。 全方向協調搬送システムについては、複数台の2輪移動ロボットにアクティブキャスタの動作を生成するような制御手法を考案し、複数台のロボット間で互いのロボットの情報を用いなくとも、搬送物移動のための動作が生成することを検討した。その効果を確認するため、シミュレーションを構築し、目的の動作が実現可能であることを示した。また、実環境において、提案するシステムが機能するかを確認するための試作機の設計、組み立てを行った。
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今後の研究の推進方策 |
アクティブキャスタの第1試作での実験結果、制御方法の改良などを踏まえ、容易に取付取り外しが可能となるアクティブキャスタの第2試作を行う。また、ハンドルにより行っていた力検出機能をアクティブキャスタの車輪部に搭載し、台車のどの部分に操作力を作用させても力が計測できる構造とその力検出アルゴリズムの実現を目指す。さらに、全方向協調搬送システムのおいては、複数台の移動ロボットによる全方向協調搬送のための周囲のセンシング方法とその実現、および複数ロボット間の通信プロトコルの検討とその実装を行う。
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