作業療法実践では,重度神経難病者(児)の発症型や病態の進行が極めて個別的であり,病態進行に合わせた即時的で詳細な個別的支援が極めて重要となる.また,球麻痺症状や医学的処置での人工呼吸器装着による発声の困難は自立的な生活を著しく制限し,医療提供の自己選択はもとより,家族や社会との意思疎通すら瞬時に困難とする現状にある.重度神経難病者(児)の新たな支援技術として,ヒトの受聴特性に着目した事象関連電位P300成分(P300 ERP)による独自の生活支援システムの構築と聴覚刺激呈示条件に関わる基礎的研究を検討した.従来までの「Brain-Computer Interface(BCI)」研究領域では応用されていない「聴覚刺激」を用い,音刺激の選択的注意により得られるP300成分をPC制御コマンドとしたP300型BCI構築の可能性を検証した.本研究課題は3年間を実施期間とし,初年度・次年度に実験用プロトタイプを構築し,選択的注意課題とする聴覚刺激の種類(単音及び複合音)と提示方法について気導音及び骨伝導音での受聴特性を検討し,協力の得られた成人被験者を対象に実験により検討した.3年間で進める研究目的と方法は,以下を中心に推進した.1) 骨伝導刺激条件によるP300 成分の安定導出条件を検証するために,オンラインでの P300 型 BCI 実験システムを構築する,2) 音像定位刺激を用いたP300型BCIシステムを構築する,3) オンライン解析システムを構築し,音像定位刺激システムによる健常被験者からのデータ収集と分析・解析を進めて最適条件を検討する,4) オフライン・データ分析システムの設計と聴覚刺激呈示による P300 成分のオフライン分析とコマンド発信システムを検討する.5)音源配置・音圧・純音・複合音・左右側相互への異種選択刺激など,様々な聴覚刺激音ごとの選択受聴精度を検討する.
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