当初計画では全身用の装着型ロボットを試作・検証する予定であったが、COVID-19の影響と、研究推進で顕在化した問題を踏まえ、上半身用に試作・検証対象を限定した。加えて、本研究の核となる「表面骨格型という新たな装着型アシストロボットの実現可能性検証」と「アシスト効果の基礎評価」に課題も限定して取り組んだ。「ヒトの体表形状に基づいた表面骨格型ロボット機構設計法の提案」と「検証用実機の製作と基礎的な評価」が主な成果である。これら成果を国内会議2件で発表した(更に1件6月発表予定)。また、2件の講演にて、一般向けに本研究についても紹介した。なお、最終年度に出た成果は継続的に発信していく予定である。以下に、概要を記す。 昨年度3Dプリンタで試作した着用者の運動を阻害しない剛体リンク部構造をベースに、人工筋配向を検討して上半身用の表面骨格型アシストロボットを試作した。比較的運動がモデル化しやすい腕部と、モデル化しにくい体幹部に対し、各々筋配向手法を検討した。前者は、一般的なリンクモデルをベースに筋端点となる表面まで拡張して検討し、肘部屈曲運動に対応した。後者は、昨年度導入したマーカを用いた高精度・低ノイズな三次元形状計測環境を活用し、体表形状変化に基づいた筋配向法を開発した。ヒトの関節と同等の硬さと可動域を有する介護練習用人形に上半身用試作機を装着し、提案機構の有用性を検証した。ここでは、表面骨格部となる面状リンクを配置した場合と配置しない場合における人形の可動範囲を比較・評価した。結果、同一出力で提案ロボットを動かした場合でも、面状リンクがあることで人形の可動範囲が広がり、着用者に効果的に力を伝達できる可能性が見えた。研究を通して幾つかの課題も顕在化したが、本研究の目標である「表面骨格型という新たな装着型アシストロボットの実現可能性」は十分に見えたと考える。
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