研究課題/領域番号 |
20H04566
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
中後 大輔 関西学院大学, 工学部, 教授 (90401322)
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研究分担者 |
しゃ 錦華 東京工科大学, 工学部, 教授 (10257264)
橋本 洋志 東京都立産業技術大学院大学, 産業技術研究科, 教授 (60208460)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 起立動作 / 随意運動 / 姿勢制御運動 / 筋シナジー |
研究実績の概要 |
本年度までに実施した内容は以下の通りである。 (B)筋シナジーに基づく支援方策の確立(研究目的の課題2に対応) (B-1)筋シナジー欠損状態の推定法の確立(担当:中後、橋本、大学院生2名) 静的・動的な起立姿勢から筋シナジー欠損状態の推定を行うため、「(A-2)随意運動と姿勢制御運動の相互依存性に基づく筋シナジー起立人間モデルの確立」で確立した筋シナジー起立人間モデルを用いた。特に本研究では、ある一部欠損のある筋シナジー(筋シナジー起立人間モデルの入力)であっても起立姿勢(同、出力)がほぼ同じ場合のデータに着目した。これは、残存する筋力が相互補完しての筋シナジー効果を示す例であると考えた。これらを類型化するため、ある出力に対して複数の入力が存在し得るという関係を分類化してデータベースに記録した。次に、自力での起立が困難な(さらに欠損部分領域が拡大している)患者について、同様の関係を調べ、先のデータベースと比較することで、欠損している筋肉部位、その影響がどのように筋シナジーに現れるかを分析するというアプローチをとり、筋シナジー欠損状態の推定法を見出した。 (B-2)筋シナジー欠損状態に応じた外力支援の策定(担当:中後、橋本、大学院生2名) (B-1)の筋シナジー欠損状態とこれを補う任意の支援力を、筋シナジー起立人間モデルの入力として与え、このときの起立動作を見ることで、起立動作を達成できる支援力を見い出した。ここで得られる支援力は、身体の自由度の観点から複数あると考える。そこで、得られた複数の支援力のうち、患者の筋力の残存能力を最大限活かせるものを支援方策とした。この選定は研究代表者が開発した筋シナジー解析を用いて、筋発揮パワー・仕事量の観点から行った。さらに、理学療法士が行う静的・動的起立支援との比較を通して、その差異が何を意味するかの考察を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
新型コロナウィルス感染症が政府によって5類に移行したことを受け本学も出張自粛が解除された。その結果、本研究に必要な専門職の方や患者様へのヒアリング・被験者実験を実施することが出来、研究を進捗させることが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
次年度に実施する内容は以下の通りである。 (C)起立支援装置の設計論(課題3に対応) (C-1)装置による支援方策の実現化法(担当:中後、しゃ、大学院生2名) 実際の支援機器はアクチュエータ機構の自由度や出力パワーは限定される。このため、主に静的起立支援を対象とする。装置による支援方策の実現化は、「(B-2)筋シナジー欠損状態に応じた外力支援の策定」にて見出した支援方策に何らかの近似を行わなければならず、この近似の指針として、患者の静的起立時の随意運動軌道に近いこと、機器の出力パワー限界値、理学療法士の介入動作パターンから研究代表者が従来開発してきた姿勢誘導効果の高い支援方策、さらに、本研究の特色である患者固有の安定余裕モデルが十分に許容できる、これら全てを考慮できることを条件とする。 (C-2)起立支援装置への実装・被験者による評価実験(担当:中後、しゃ、橋本、大学院生2名) (C-1)で求めた支援方策を研究代表者が開発中の起立支援装置に実装し、介護現場で被験者実験を通して筋シナジー起立人間モデルとそれに基づく支援方策の有効性を検証する。評価項目は、被験者の筋シナジー状態、起立姿勢、起立支援を受けたときの心理評価などを予定している。また、コロナ渦によって介護施設への立ち入りが厳しく制限されている状況を考慮し、遠隔で身体データを計測する手段について検討する。これらの実験は、協力施設の同意を得た上で実施するものとし、被験者には、本研究で行う「安全な実験の実施のための方策」「個人情報保護法の遵守」を事前に十分に説明し、納得してもらった後で実験に協力してもらう。また、実験途中で、実験への不参加の意思が生じた場合、いつでも実験への参加を取りやめることができることの説明を行う。
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