• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2022 年度 実績報告書

常在細菌叢の動作原理理解に基づく微生物製剤の開発

研究課題

研究課題/領域番号 20H05627
研究機関慶應義塾大学

研究代表者

本田 賢也  慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 教授 (60334231)

研究分担者 寺嶋 秀騎  国立研究開発法人理化学研究所, 生命医科学研究センター, 基礎科学特別研究員 (60912897)
研究期間 (年度) 2020-07-30 – 2026-03-31
キーワード腸内細菌 / 抗生物質耐性菌 / 代謝疾患 / 大腸がん / 百寿
研究実績の概要

1.免疫疾患・ワクチン、2.多剤耐性菌感染、3.代謝疾患、4.がん、5.健康長寿、に影響する常在細菌を探索した。まず、Paraprevotella claraが、トリプシンやTMPRSS2の分解を介してMurine hepatitis virusの腸管感染を阻害することを見いだした。さらにP. claraのトリプシン分解遺伝子はCOVID19感染症における腸炎発症と逆相関していることを見いだした。これを論文として報告した(Nature. 2022)。また、抗生物質耐性菌を除去できる有益な細菌種を探索し、ヒト便から31菌株を単離し、そのうち、18種類のFirmicutesを中心とした菌株の組み合わせが、クレブシェラ株だけではなく、接着浸潤性大腸菌などに対しても腸管からの除去効果を発揮することを見いだした。更にそのメカニズムもトランスポゾンミュータジェネシスを用いることで明らかにすることができた。代謝疾患を改善する細菌種を探索する研究においては、低タンパク食が、白色脂肪組織において、腸内細菌依存的にBeige細胞を強力に誘導することを見出した。健常者にFDG-PET行って、FDGの集積が確認された1名の便から単離した33菌株にBeige細胞誘導を促進する作用があることがわかった。大腸がんに影響する細菌種の探索研究では、APCf/f x KrasLSL-G12D x Tp53f/f x Cdx2-CreERT2マウス (AKTCマウス)が腸内細菌依存的に大腸腫瘍を発症すること、更に、大腸がん切除標本上皮から単離した14菌株にAKTCマウスにおける大腸腫瘍発症作用があることが分かった。そして百寿者の便サンプルから3-oxo-LCAやallo-iso-LCAといった特殊な胆汁酸を代謝合成する細菌を同定し、それらの細菌種はステロイドも代謝することがわかった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

1. 免疫疾患・ワクチンを増強する細菌の探索:SARS-CoV2 mRNAワクチン2回以上接種者104名の便と血清を収集した。Dorea formicigeneransやStreptococcus salivariusが抗体価と正の相関があることがわかった。
一方別の解析から、Paraprevotella claraが、トリプシンやTMPRSS2の分解を介してMurine hepatitis virusの腸管感染を阻害することがわかった。これを論文として報告した(Nature. 2022)。
2. 抗生物質耐性菌を除去できる有益な細菌種の同定:ヒト便から31菌株を単離し、そのうち、18種類のFirmicutesを中心とした菌株の組み合わせが、クレブシェラ株だけではなく、接着浸潤性大腸菌などに対しても腸管からの除去効果を発揮した。
3. 代謝疾患を改善する細菌種の同定:低タンパク食が、白色脂肪組織において、腸内細菌依存的にBeige細胞を強力に誘導することを見出した。25名の健常者にFDG-PET行って、FDGの集積が確認された1名の便から、33菌株の細菌株を分離した。その33菌株を無菌マウスに投与し、低タンパク食を与えると、強いBeige細胞誘導が確認された。
4. 大腸がんに影響する細菌種の同定:APCf/f x KrasLSL-G12D x Tp53f/f x Cdx2-CreERT2マウス (AKTCマウス)が腸内細菌依存的に大腸腫瘍発症モデルとして適していることが分かった。大腸がん外科的切除標本の上皮から単離した14菌株を無菌AKTCマウスに定着させたところ、大腸腫瘍が発症することが分かった。
5. 健康長寿:百寿者の便サンプルから3-oxo-LCAやallo-iso-LCAといった特殊な胆汁酸を代謝合成する細菌を同定した。それらの細菌種はステロイドも代謝することがわかった。

今後の研究の推進方策

1. ワクチンレスポンス: SARS-CoV2 mRNAワクチン投与後のボランティアの便と血漿を収集し、高い抗体価を示す細菌叢の特徴を明らかにする。更に、その便から抗体レスポンスを増強する細菌の単離を目指す。
2. 抗生物質耐性菌: 健常者の便サンプルから、抗生物質多剤耐性菌クレブシエラ菌に対して腸管定着防御に働く18菌株を同定し、そのメカニズムを明らかにできたので、クレブシェラが増加する疾患(炎症性腸疾患など)との関連性も調べる。
3. 代謝疾患:ヒト腸内細菌叢の中から33菌株が、低タンパク食によるBeige誘導を十分に媒介できることが分かったので、そのメカニズムの詳細を明らかにする。
4. がん: APCf/f x KrasLSL-G12D x Cdx2-CreERT2マウスにおいて大腸腫瘍を誘導する14菌株を同定したので、その腫瘍誘導メカニズムを明らかにする。
5. 健康長寿: 百寿者便から単離したallo-iso-LCA産生菌はテストステロンの代謝も媒介することが分かったので、その代謝産物の機能を明らかにする。

  • 研究成果

    (10件)

すべて 2023 2022 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 3件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 3件、 招待講演 3件) 産業財産権 (1件) (うち外国 1件)

  • [国際共同研究] Broad Institute(米国)

    • 国名
      米国
    • 外国機関名
      Broad Institute
  • [雑誌論文] Identification of trypsin-degrading commensals in the large intestine2022

    • 著者名/発表者名
      Li Youxian (32名中1番目)、___、Honda Kenya (32名中32番目)
    • 雑誌名

      Nature

      巻: 609 ページ: 582~589

    • DOI

      10.1038/s41586-022-05181-3

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] Microbiota imbalance induced by dietary sugar disrupts immune-mediated protection from metabolic syndrome2022

    • 著者名/発表者名
      Kawano Yoshinaga、____、Honda Kenya (13人中12番目)、Ivanov Ivaylo I.
    • 雑誌名

      Cell

      巻: 185 ページ: 3501~3519.e20

    • DOI

      10.1016/j.cell.2022.08.005

    • 査読あり / 国際共著
  • [雑誌論文] Targeted suppression of human IBD-associated gut microbiota commensals by phage consortia for treatment of intestinal inflammation2022

    • 著者名/発表者名
      Federici Sara、___、Honda Kenya (53人中45番目)、___、Elinav Eran
    • 雑誌名

      Cell

      巻: 185 ページ: 2879~2898.e24

    • DOI

      10.1016/j.cell.2022.07.003

    • 査読あり / 国際共著
  • [雑誌論文] The effects of oral microbiota on health2022

    • 著者名/発表者名
      Tuganbaev Timur、Yoshida Koji、Honda Kenya
    • 雑誌名

      Science

      巻: 376 ページ: 934~936

    • DOI

      10.1126/science.abn1890

    • 査読あり
  • [雑誌論文] T Cell Responses to the Microbiota2022

    • 著者名/発表者名
      Ivanov Ivaylo I.、Tuganbaev Timur、Skelly Ashwin N.、Honda Kenya
    • 雑誌名

      Annual Review of Immunology

      巻: 40 ページ: 559~587

    • DOI

      10.1146/annurev-immunol-101320-011829

    • 査読あり
  • [学会発表] Toward development of defined microbial therapeutics2023

    • 著者名/発表者名
      Kenya Honda
    • 学会等名
      Global Immunotalks
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] Interspecies communication for structuring homeostatic microbiota2022

    • 著者名/発表者名
      Kenya Honda
    • 学会等名
      IHMC2022
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] Toward the development of defined microbial therapeutics2022

    • 著者名/発表者名
      Kenya Honda
    • 学会等名
      Microbiome Virtual International Forum
    • 国際学会 / 招待講演
  • [産業財産権] トリプシン又はTMPRSS2の分解用組成物2022

    • 発明者名
      Youxian Li, 本田賢也 ほか
    • 権利者名
      Youxian Li, 本田賢也 ほか
    • 産業財産権種類
      特許
    • 産業財産権番号
      PCT/JP2022/001494
    • 外国

URL: 

公開日: 2023-12-25  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi