研究課題/領域番号 |
20H05631
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
小野 善康 大阪大学, 社会経済研究所, 特任教授(常勤) (70130763)
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研究分担者 |
芹澤 成弘 大阪大学, 社会経済研究所, 教授 (90252717)
池田 新介 大阪大学, 社会経済研究所, 招へい教授 (70184421)
青柳 真樹 大阪大学, 社会経済研究所, 教授 (50314430)
石田 潤一郎 大阪大学, 社会経済研究所, 教授 (40324222)
堀井 亮 大阪大学, 社会経済研究所, 教授 (90324855)
敦賀 貴之 大阪大学, 社会経済研究所, 教授 (40511720)
松島 法明 大阪大学, 社会経済研究所, 教授 (80334879)
花木 伸行 大阪大学, 社会経済研究所, 教授 (70400611)
山形 孝志 大阪大学, 社会経済研究所, 特任教授(常勤) (20813231)
BRAGUINSKY SERGUEY 大阪大学, 社会経済研究所, 特任教授(常勤) (40868436)
朱 連明 大阪大学, 社会経済研究所, 准教授 (60770691)
柴田 章久 京都大学, 経済研究所, 教授 (00216003)
橋本 賢一 神戸大学, 経済学研究科, 教授 (70403219)
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研究期間 (年度) |
2020-08-31 – 2025-03-31
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キーワード | マクロ経済学 / 資産選好 / 行動経済学 / アンケート調査 / 経済実験 |
研究実績の概要 |
3つのサブプロジェクトごとに研究実績を説明する。 1)環境規制が環境改善と総需要創出の両者を実現して、いわゆるdouble dividends(二重配当)があることを示すとともに、最適な環境政策を示した。また、各産業でのインフレ継続性と産業集中度との負の関係を理論と数値解析の両面から示した。景気と格差に関連し、輸入企業数や外国企業の生産性の変化が地域間産業格差に与える影響や、高齢化が企業の国際分布を通して各国の景気に与える影響を示した。さらに、本研究の核心である資産選好が不況、格差、バブルなどの諸問題を引き起こすメカニズムの研究成果を広く政策担当者や一般読者にも理解できるように、新書の形でわかりやすくまとめた。 2)2021年度のアンケート調査では、特にアンケート対象者の高齢化に対応するため、20歳~39歳の男女個人を対象に新規サンプルの抽出を行った。また、2021年度の予算で再度アンケート調査(調査はコロナ禍のため、2022年度に実施)を行い、これらの新規サンプルを合わせて約3500世帯を対象に調査を行った。また、2020年度に開始した資産市場実験を終了し、分析の結果を論文にまとめ、学会等で発表した。これに並行して、高齢者の資産保有にあたって問題となり始めた複雑な金融資産のリスク誤認に関しても、実験を通じて検証し論文にまとめた。 3)技術革新が最も活発である情報産業において、大規模な消費者データを蓄積している企業とデータの利用ソフトを持つ企業の合併がもたらすシナジー効果を分析し、それに対応する必要な政策を検討した。制度設計成功のかぎとなる条件である耐戦略性が、実際に発揮されるための工夫を施す経済実験を行った。組織設計の基礎モデルであるシグナリング・ゲームにおいて、Double-crossing 条件を提唱し、その条件下での均衡を分析した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1)環境規制と総需要創出を実現する環境政策の研究成果はEconomic Modelling (Ikefuji and Ono, 2021)に、インフレ継続性と産業集中度の研究成果はJournal of Economic Behavior and Organization (Kato, Okada and Tsuruga, 2021)に、生産性の変化が地域間産業格差に与える影響の研究成果はReview of International Economics(Davis and Hashimoto, 2021)に、公刊された。さらに、政策担当者や一般読者の理解を深めるために、本研究の核心部分である資産選好が諸問題を引き起こすメカニズムをわかりやすく説明し、それに基づいた経済政策や制度のあり方をまとめて、「資本主義の方程式」(中公新書、小野)として出版した。 2)本研究のアンケート調査の開始がコロナ・パンデミックと重なったため、調査方法の変更を余儀なくされたが、新規サンプルを合わせて約3500世帯を対象に調査を行うことができた。また、資産市場実験を終了し、分析の結果を論文としてまとめた。 3)情報産業での合併がもたらすシナジー効果の分析の結果についてはThe RAND Journal of Economics (Chen, Choe, Cong, Matsushima, 2022)に、耐戦略性を検証する経済実験の結果はExperimental Economics (Masuda, Mikami, Sakai, Serizawa, Wakayama, 2022)に、組織設計の基礎となるシグナリング・ゲームにおいて、Double-crossing 条件を提唱し、シグナリング・ゲームの均衡の性質を分析して得られた結果は、Econometrica (Chen, Ishida and Suen, 2022)に公刊された。 上記以外にも研究発表〔雑誌論文〕に挙げたように、数多くの論文が世界的な学術誌に公刊された。このように、当初計画通りに分析を進めることができ、多くの知見を得て世界的な国際査読誌に発表され、また、本研究の概要と政策提言を行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
1)家計が資産選好を持つ経済を前提に、労働市場の不完全性がもたらす失業と、需要不足が生み出す時短や非正規雇用などの不完全雇用とを区別し、両者を組み込んだ理論モデルを構築するとともに、労働市場の効率化や財政政策が失業や不完全雇用の変化を通して経済活動全体与える影響を明らかにする。さらに、先進国経済が経済成長するにつれて完全雇用から需要不足に陥っていく経過を理論的に分析する。次に、消費刺激効果が期待されるプロダクト・イノベーションが、消費選好と資産選好への影響を通して景気全体に与える効果を求める。本モデルを国際経済の枠組みにも拡張し、環境政策が環境改善と景気効果の両方を通じて国際波及する場合の環境政策のあり方を探る。 2)2021年度の予算では、新規サンプル取得の対応として、アンケート調査を2度実施することを試みたが、結果的に2022年度での実施となった。そこで、2022年度の予算ではアンケート調査は実施せず、改めて2023年度に実施する。なお、本アンケートは訪問調査を前提としていたが、2020年度から2022年度までの3度の調査はすべて郵送での調査となったため、調査の連続性の観点から、2023年度も郵送調査で実施する予定である。これまでに実施した資産市場実験を発展させる形で資産市場実験を継続するとともに、より設定を単純にした消費と貯蓄に関しての意思決定実験をデザインし、その枠組みの中で地位選好が資産選好につながるかどうかを検証する。 3)プロダクト・イノベーションにつながる知識探索を促す組織や市場環境・産業構造の要因を特定し、イノベーション促進のための制度を明らかにする研究を行っていく。また、政府が直接間接に取引に介入し、非市場的な方法で物やサービスの取引を促しながら遊休資源を活用するための政策のあり方を探っていく。さらに、理論的な分析結果を経済実験により検証し、その結果を理論分析にフィードバックする。
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