研究課題/領域番号 |
20H05636
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
関口 仁子 東北大学, 理学研究科, 准教授 (70373321)
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研究分担者 |
若狭 智嗣 九州大学, 理学研究院, 教授 (10311771)
前田 幸重 宮崎大学, 工学部, 准教授 (50452743)
坂口 聡志 九州大学, 理学研究院, 准教授 (70569566)
立石 健一郎 国立研究開発法人理化学研究所, 開拓研究本部, 研究員 (80709220) [辞退]
酒井 英行 国立研究開発法人理化学研究所, 仁科加速器科学研究センター, 客員主管研究員 (90030030)
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研究期間 (年度) |
2020-08-31 – 2025-03-31
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キーワード | 三体力 / 偏極陽子 / 偏極重陽子 / 三核子系 / 三体核力 |
研究実績の概要 |
(1)理研RIBFにおける重陽子・陽子弾性散乱スピン相関係数測定の準備、(2)偏極陽子固体標的の建設、(3)カイラル有効場核力に基づく核子間三体力の構築の研究を進め、重陽子・陽子弾性散乱実験値に基づく核子間三体力の決定を行う研究を遂行している。 (1)では、散乱の非対称度測定のための大立体角検出器の製作、データ収集系の整備、偏極イオン源動作試験を進め、理研での実験の準備を整えつつある。(2)では、ナフタレン結晶をベースとするTriplet-DNPを用いた偏極陽子標的の建設を進めた。広角度範囲測定に則した電磁石、マイクロ波共振器、標的冷却用チェンバーおよびナフタレン単結晶の製作、更にパルスNMRによる偏極度測定システムの整備を行った。これまでに重陽子一次ビーム用の単結晶標的(φ10mm, 2mm厚)の生成と整形に成功した。ビームオフライン測定においてTriplet-DNPによる偏極信号をNMRによって観測することに成功、DNP条件の最適化を行い正負偏極共に約30%-40%の偏極度を達成している。(1)(2)において重陽子・陽子弾性散乱測定を高効率に行うため、偏極陽子標的に用いる電磁石の磁場を当初計画のより高くし(0.35T)、到達偏極度を40%以上とする計画に変更している。このため磁場の影響を受けた散乱粒子の飛跡を追尾するための飛跡検出器(MWDC)を導入した。(3)では、カイラル有効場核力(χEFT核力)に基づく重陽子・陽子弾性散乱の理論解析として、(a)重陽子・陽子弾性散乱の微分断面積が最小値となる角度付近に有意な三体力効果が現れる事、(b)同散乱系の精緻な記述にはχEFT核力の第5次までの摂動展開が必要な事、(c)χEFT三体力の短距離部を反映する低エネルギー定数の決定にはスピン相関係数が必要である事が明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)理研RIBFにおける重陽子・陽子弾性散乱スピン相関係数測定の準備については検出器製作を計画期間内に終え、データ収集系の整備も進んでいる。(2)偏極陽子固体標的の建設については、オフライン測定ながら到達偏極度が40%を達成している。(3)カイラル有効場核力に基づく核子間三体力の構築については、重陽子・陽子弾性散乱の測定が、χEFT核力核力の第5次項の決定に有用である事が示され、核子間三体力の構築が進行中である。以上をふまえて、おおむね順調に進展しているとした。
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今後の研究の推進方策 |
理研RIBFにおける重陽子・陽子弾性散乱のスピン相関係数の測定に向けて、検出器系とデータ収集系のビーム試験を行う。同実験は理研RIBFでの実験と同程度の軽イオン(陽子200MeV)ビームが得られるHIMACで遂行する予定である。この測定では、偏極陽子固体標的の偏極度絶対値較正測定も併行して行う。偏極陽子標的に関しては、常温での安定動作が可能と考えられるp-ターフェニルの採用を進める。理論研究については三体力ポテンシャルの記述を第5次項まで進めると同時に、重陽子・陽子弾性散乱に対してカイラル有効場に基づく部分波展開を遂行する。
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