研究課題/領域番号 |
20H05638
|
研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
中條 達也 筑波大学, 数理物質系, 講師 (70418622)
|
研究分担者 |
三明 康郎 筑波大学, 数理物質系(特命教授), 特命教授 (10157422)
Novitzky Norbert 筑波大学, 数理物質系, 助教 (30842570)
稲葉 基 筑波技術大学, 産業技術学部, 准教授 (80352566)
杉立 徹 広島大学, 学術・社会連携室, 特任教授 (80144806)
下村 真弥 奈良女子大学, 自然科学系, 助教 (70555416)
蜂谷 崇 奈良女子大学, 自然科学系, 助教 (10589005)
大山 健 長崎総合科学大学, 工学研究科, 教授 (10749047)
|
研究期間 (年度) |
2020-08-31 – 2025-03-31
|
キーワード | 量子色力学 / カラーグラス凝縮 / クォーク・グルーオン・プラズマ / 電磁カロリメータ / 前方物理 / LHC 加速器 / ALICE 実験 / シリコン検出器 |
研究実績の概要 |
2021年度では、P型シリコンセンサーとフロントエンド集積回路 HGCROC を接続するために、新たな基板開発を仏・Grenoble LPSC と行い、センサーとHGCROC を接続し、第3号試作機を製作した。製作したモジュールを CERN SPS加速器のテストビームラインにてテストした(10-11月)。シリコンセンサーに 120 GeV ハドロンビームを照射し、応答でを測定したところ、最小電離粒子シグナルが明確に観測されていることが分かった。更に、モジュールの前面にタングステン板を複数設置し、80 GeV/c の電子ビームを照射し、電子シャワーの測定に成功した。これらの結果とPixel 検出器、ハドロンカロリメータ検出器の実験結果を合わせて、CERN EP newsletter に記事を投稿、掲載された。
2018年に我々日本グループが製作した FoCal 第2号試作機(mini-FoCal)のデータ解析を進めた。学術誌への投稿の最終段階にある。性能を評価した結果、エネルギー分解能にして約4%を達成していることが分かった(目標5%以下)。これらの結果をまとめ、学術誌に投稿する。
2021年、佐賀大学もALICE フルメンバーとして加入し、FoCal 後段の読み出し開発に参加した。長崎総合科学大学は、FoCal における読み出し回路担当となり、トリガー開発を本格的に開始した。理研と合同で放射線耐性テストに関する共同研究を実施しした。FoCal 日本グループは、筑波大、筑波技術大、理研、奈良女子大、広島大、長崎総合科学大、佐賀大の7機関、18名となり、 FoCal 国際コラボレーションの中において、FoCal-E pad 検出器の責任機関であると同時に、読み出しシステム、トリガー開発においても中心的な位置を占めるに至った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
概ね順調に進展している。特に新型p 型シリコンセンサーとHGCROC 読み出し集積回路を用いた第3号試作機に関して、テストビーム実験や実験室での基礎特性測定を通じて、この2年間で開発の目処がついた。この開発を完了させ、2022年に予定されているCERN でのテストビーム実験、および KEK でのテストビーム実験を行い、最終R&D は完了し、2023年に FoCal の技術デザイン書 (TDR) を策定できると考えている。
懸念事項の1つとして、新型コロナの影響による世界的な半導体不足がある。本研究はシリコンセンサーを使うことが必須であるため、影響は避けられない。ただし十分事前に発注準備を行い、必要枚数のセンサーを確保すれば、最小限の影響で問題なく研究が進められると考えられる。
2つ目の懸念は、ウクライナ情勢である。ウクライナの研究機関では、FoCal-E Pixel 検出器のフレキシブル基板の製造を行っている。ウクライナ情勢が好転しない場合は Pixel 開発を行っている別の機関、例えばベルゲン大学 (ノルウェー)などの協力により、別の機関で基板を製造し、計画を遂行する可能性がある。
|
今後の研究の推進方策 |
2022年度では、FoCal-E pad 第3試作機を引き続き製作し、製作したモジュールのビーム試験を行い、性能を評価する。まず6 月に CERN PS 加速器を用いてテストを行う。その際、複数のモジュールを同時に読み出すことができる「アグリゲータボード」を用いて読み出す。7月には、KEK PF-AR 加速器でのテストビームラインが使用できる場合、FoCal をKEKビームラインでテストを行う。9月、11月には、FoCal-E pad に加えて、pixel, FoCal-H 検出器も合わせた統合試験を CERN SPS (H8, H2) で行う。これが TDR に向けた最終テストとなる。テスト終了後、データ解析を行い、その結果を投稿論文にまとめ、投稿する。同時に TDR に掲載する資料を作成する。理研小型中性子源システム RANS を用いて、放射線耐性テストを継続して実施する。これまでの IV 特性に加えて、CV 特性の取得、素子の放射線耐性も評価する。これらの結果を投稿論文、TDR にまとめる。また専用のprobe station の開発を完了し、中性子照射前後の違い等、シリコンセンサーの基礎特性を系統的に調べ、まとめる。データ解析に向けた ALICE コンピューティングの再構築を筑波大にて行う。
令和5(2023)年度は、TDR を作成し、LHCC 委員会に提出する。5 pad layer のモジュール製作の作業工程を定め、製作を開始する(FoCal 第4試作機)。製作後は KEK PF-AR テストビームラインを用いて、各 layer の最小電離粒子シグナルを捉え、ゲインの較正を行う。令和6(2024)年度は、FoCal 第4試作機を ALICE 前方、衝突点から 7m の位置に導入する。そこで中性パイ中間子 (π0) を再構成し、その横運動量分布を測定し、最初の物理論文とする。またπ0-π0 相関測定から CGC の兆候が見られるかどうかを確かめる。これらの初期結果を、国際会議Hard Probes 2024 会議(350人規模、議長:中條、開催地 長崎)にて発表する。
|