研究課題/領域番号 |
20H05645
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研究機関 | 国立天文台 |
研究代表者 |
立松 健一 国立天文台, 野辺山宇宙電波観測所, 教授 (40202171)
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研究分担者 |
坂井 南美 国立研究開発法人理化学研究所, 開拓研究本部, 主任研究員 (70533553)
酒井 剛 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 准教授 (20469604)
小川 英夫 大阪府立大学, 理学(系)研究科(研究院), 客員教授 (20022717)
徳田 一起 大阪府立大学, 理学(系)研究科(研究院), 客員研究員 (60802139)
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研究期間 (年度) |
2020-08-31 – 2025-03-31
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キーワード | 星形成 / 分子雲コア / 始動条件 / 重水素 |
研究実績の概要 |
本研究で製作している野辺山45m電波望遠鏡用の新7ビーム3帯域両偏波受信機は、順調に開発が進み、ほぼ完成の状態にある。2022年度前半に新型コロナの状況を見ながら、野辺山45m電波望遠鏡に搭載予定である。 野辺山45m電波望遠鏡と既設の4ビーム両サイドバンド両偏波受信機FORESTを用いて、JCMT望遠鏡搭載のサブミリ波カメラSCUBA-2で同定された分子雲コア107個を含む44領域のOn-the-Fly方式のマッピング観測を行った。野辺山45m電波望遠鏡による観測で重水素の割合が観測されているコア(Gwanjeong Kim, Ken'ichi Tatematsu, et al 2020)を中心に、82-94GHzの周波数帯に輝線のある分子N2H+、HC3N、およびCCSの輝線を観測した。N2H+分子およびHC3N分子の輝線の天球上での分布は、850μmのダスト連続波の分布に似ていることが明らかになった。CCS分子の輝線は、検出されないか、または、検出された場合は850μmのダスト連続波のピーク位置を取り巻くように分布しているということが明らかにされた。「星ありの分子雲コア」に関し、12%の分子雲コアで原始星の方向でCCSが検出されたが、これは原始星付近の高い励起によると考えられる。乱流の散逸は星形成の始動メカニズムの一つの候補と目されているが、分子雲コアの進化に従って非熱的速度分散が変化している様子は観測されなかった。このことは、星形成の始動条件として、乱流の散逸があまり効いていないことを示唆するのかもしれないと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナ感染が広がっている状況の中ではあるが、受信機の開発はおおむね順調である。2020 年度末に開発の若干の遅れのために、調達を遅らせるための繰り越しを必要としたが2021 年度中にリカバーしている。現在のところ、主要部分は完成しており、2022 年度前半の搭載に向けて、開発に見落としがないかを確認している段階である。 野辺山45m 電波望遠鏡を用いた研究の方は順調であり、野辺山45m 電波望遠鏡の既存受信機を用いた、重水素の割合の高い分子雲コアの電波地図集を研究代表者を筆頭著者とする査読論文として出版した。 また、これらのコアに対して、野辺山45m 電波望遠鏡をもちいて、「星なし分子雲コア」、「星あり分子雲コア」の両方について、コア中心への落下運動のサーベイを行った。「星なし分子雲コア」1天体においては、大変興味深い重力加速運動の兆候を取得しており、星誕生直前の分子雲コアの状況として大変興味深い。この結果は、研究代表者を筆頭著者として、査読論文を投稿中し、受理され、現在印刷中である。 アルマ望遠鏡を用いた追観測も、極めて順調であり、ALMASOP 国際共同研究としてすでに10 本以上の査読論文を出版している。
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今後の研究の推進方策 |
3 年目の2022 年度は、受信機を野辺山45 m電波望遠鏡に搭載し、立ち上げ・試験観測を行う。
4-5 年目の2023-2024 年度には、星形成の規模が大きく異なる、我々の銀河系内の代表的な星形成領域、おうし座、へびつかい座、オリオン座、赤外線暗黒星雲のサーベイ観測を行い、その違いを分子雲コアの進化を追いつつ比較研究という新しい切り口で研究する。またアルマ望遠鏡を用いた高分解能・高感度follow-up 観測を提案遂行する。
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