研究課題/領域番号 |
20H05646
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研究機関 | 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構 |
研究代表者 |
下村 浩一郎 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 教授 (60242103)
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研究分担者 |
吉田 光宏 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 加速器研究施設, 准教授 (60391710)
飯沼 裕美 茨城大学, 理工学研究科(理学野), 准教授 (60446515)
佐々木 憲一 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 超伝導低温工学センター, 教授 (70322831)
仁尾 真紀子 国立研究開発法人理化学研究所, 仁科加速器科学研究センター, 上級研究員 (80283927)
清水 裕彦 名古屋大学, 理学研究科, 教授 (50249900)
藤田 全基 東北大学, 金属材料研究所, 教授 (20303894)
中野 岳仁 茨城大学, 理工学研究科(理学野), 准教授 (50362611)
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研究期間 (年度) |
2020-08-31 – 2025-03-31
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キーワード | ミュオン / 超微細構造 / 磁気モーメント / 電磁トラップ |
研究実績の概要 |
本課題で測定を実施するJ-PARCミュオン施設の大強度ミュオンビームラインであるHラインでは、主要コンポーネントの設置作業が完了し、2022年1月に本研究を遂行する実験エリアにビームを取り出すことに成功した。ビーム取り出し以降、最適なビーム条件を探すコミッショニングを進めながら以下の開発・研究に着手した。①3He NMR測定装置の製作、②イオン化レーザーの製作、③ミュオントラップの設計、④陽電子検出器の設計。 ①については、実際の3Heセルを試作し、メタステーブル状態3He生成に成功した。②については、ミュオニウム1s-2s測定に使用されている。③は電磁トラップの形状について新しい知見が得られたため、再度検討を行い2022年度に開発を進めることとした。④は現在ジュネーブ大学との共同研究体制の構築を進めている。 新物理を探索するためには、プローブとして用いるミュオンの質量や磁気モーメントを高い精度で決定する事が大変有効であり、現在脚光をあびつつある実験手法である。 本課題の意義は、これまで実施されてきたミュオニウムを用いた測定を発展させ高磁場下で行う方法と、原子分子光学実験で広く知られているぺニングトラップと呼ばれる測定手法をミュオンに適応させた世界初の方法の2つを用いて、ミュオン粒子そのものの実験的理解を高い精度で深めようと試みていることにある。 特に後者に関しては、単一自由粒子としてのミュオンの運動を観測することが可能となる点が大変重要である。これは、超低速ミュオンビームを大量に生成可能な世界で唯一の施設であるJ-PARCでのみ観測可能な手法である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、① 3He NMR測定装置の製作、②イオン化レーザーの製作、③ミュオントラップの設計、④陽電子検出器の設計 を目標として進めてきた。実際の成果としては、①のメタステーブル状態3Heの生成、②のイオン化レーザーの制作を行うことができた。③のミュオントラップの設計は完了には至らなかったが、一方で、最適化の見込みを立てることができた。
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今後の研究の推進方策 |
J-PARCミュオン施設の大強度ミュオンビームラインであるHラインのビームラインコンポーネントとしては、ミュオンと陽電子を分離するDCセパレタを設置し、11月の運用開始を計画している。これにより、先行実験の精度を数倍上回る測定結果を得ることを目指す。データ取得後は、これまで培ってきた我々独自の解析手法を用いて、速やかに論文発表を目指す。 一方、トラップについてはいよいよ実機の製作に取りかかる。また、レーザーは既に基本ユニットが完成してるため、大強度化を目指してアンプ系の増強等を行う計画である。また、3Heプローブは引き続き開発を行うが、当面はいままでに確立しているH20プローブを使って実験を進める。
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