研究分担者 |
石山 博恒 国立研究開発法人理化学研究所, 仁科加速器科学研究センター, チームリーダー (50321534)
LIANG HAOZHAO 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 准教授 (50729225)
西村 信哉 国立研究開発法人理化学研究所, 開拓研究本部, 研究員 (70587625)
福田 直樹 国立研究開発法人理化学研究所, 仁科加速器科学研究センター, 技師 (80360634)
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研究実績の概要 |
原子核実験:r-過程に重要な役割を果たす中性子過剰核の半減期と遅発中性子放出の解析を順調に進めている。金や白金などの起源を探るために、中性子魔法数N=126を超える中性子過剰核の崩壊測定実験を行った。問題となっていた粒子識別能力を飛躍的に改善するために導入したシリコン半導体検出器を導入し、これまでGSI研究所の独壇場であったr-過程の第3ピーク領域の崩壊測定実験に成功した。中性子魔法数N=82領域の遅発中性子放出確率を測定した結果、原子核理論に問題があることを明らかにした。その原因を調査するために、遅発中性子が励起状態から放出される際に持ち出すエネルギーを測定するために予定していた飛行時間型中性子検出器(TOFU)を開発した。高分解能質量分析装置ZD-MRTOFを導入した質量測定を実施し、質量数A=90,110領域の非常に中性子過剰な原子核(83,84Ga, 82-86Ge, 82-89As, 84-91Se, 89-92Br, 91,92Kr,113Ag, 111-113Pd, 111-113Ru, 111,112Mo)の質量を測定することに成功した。 原子核理論:新たに測定した質量情報を既存の原子核理論と融合させるためにBayesian機械学習法を導入し、さらに中性子過剰な領域の不確定性を抑えることに成功した(D.S. Hou, PRC108, 054312)。 元素合成計算:新たに得られた実験データをr-過程計算に取り込み、連星中性子星合体における元素合成の計算を行った結果、第1ピーク近傍での不確定性を抑えることに成功した(W. Xian, PRC 109, 035804)。
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今後の研究の推進方策 |
①崩壊測定: BRIKENプロジェクトにより得られた実験データを取り込んだ重元素合成の計算を行い、変形原子核が果たす役割に関して議論を行う。得られた研究成果を論文としてまとめ、国際会議で報告する。金属欠乏星のRh,Pd,Ag成分とランタノイド元素の成分に相関があることが発見された。この領域は、変形効果の影響が大きいことに加え、中性子過剰なアクチノイドの核分裂の成分も含まれている。実験データから、金属欠乏星のr過程成分に関する影響を調べる。中性子魔法数N=126領域の中性子過剰核の崩壊データの解析を行い、約10種の新半減期、約20種の新遅発中性子放出確率を決定する。 ②質量測定: 2024年秋にZD-MRTOF&崩壊測定の本実験を実施する。質量測定装置ZD-MRTOF直後に高レート不安定核ビームに対応した崩壊測定装置(β線検出器GARi、飛行時間型中性子検出器TOFU、γ線検出器)を配置する。以上、ビームラインの粒子識別測定、質量測定、崩壊測定を一括収集することにより、効率的な測定方法を実現させ、本実験に望む。得られた質量データ、崩壊データの相互の系統性を調べることにより、原子核理論へのフィードバック、中性子過剰な原子核の核構造に関 する研究を行う。 ③原子核理論:得られた質量データ、β崩壊データを取り込んだ包括的な原子核データベースの構築を始める。 ④重元素合成計算:RIBF実験で得られた測定データと原子核理論班が構築しつつある原子核データベースを取り込むことにより包括的な重元素合成の計算を行う。 以上、崩壊測定、質量測定、原子核理論、r-過程計算の連携をとることにより、r過程で形成される第2ピーク成分(質量数A~130)、希土類元素成分、第3ピー ク成分(質量数A~195)の再現を行い、r-過程の起源の謎に迫る。
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