研究課題/領域番号 |
20H05649
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
寒川 誠二 東北大学, 流体科学研究所, 教授 (30323108)
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研究分担者 |
福山 敦彦 宮崎大学, 工学部, 教授 (10264368)
野村 政宏 東京大学, 先端科学技術研究センター, 准教授 (10466857)
遠藤 和彦 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エレクトロニクス・製造領域, 研究グループ長 (60392594)
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研究期間 (年度) |
2020-08-31 – 2025-03-31
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キーワード | 無欠陥ナノ周期構造複合材料 / フォノン場制御 / 高移動度半導体素子 / フォノンバンド / エレクトロンバンド / ナノスケールサーマルマネージメント |
研究実績の概要 |
無欠陥ナノ構造作製技術・フォノンバンド評価解析技術・トランジスタ作製技術を融合することで、ナノ構造でトランジスタチャネル領域でのフォノン場を制御するナノスケールサーマルマネージメントを実現して、高移動度プレーナー型半導体素子の開発に挑戦する。 Si NP/SiGe中間層の複合チャネル構造を実現: 研究代表者・東北大学・寒川Grおよび研究分担者・産総研・遠藤Grは、Si NP構造とSiGe中間層によるチャネル構造の作製に向けて、NP間隔高精度制御技術、SiGe中間層埋め込みCVD技術、およびSiGe中間層の化学的機械研磨(CMP)による平坦化技術を確立した。 NP複合構造膜の電気特性の計測: 研究分担者・産総研・遠藤Grでは厚み約100 nmのSi NP/SiGe複合構造膜を形成し、膜面内の電気抵抗率を決定した。埋め込みによるヘテロ界面のミクロな分析により、歪量が決定できれば理論的にバンドオフセットを見積もることができる。 ナノピラー複合構造膜の熱特性の計測: 研究分担者・宮崎大学・福山Grは、励起レーザー照射によって発生した熱による表面変位量をヘテロダイン干渉計で計測するレーザーヘテロダイン光熱変位(以下、LH-PD)法の構築を行った。更に、COMSOLを用いた計算で、一次元熱伝導方程式に基づく理論計算も行い、実験結果と非常によい一致が得られた。よって、本研究課題で構築したLH-PD法は、表面変位量をサブナノメートルオーダーで高感度測定できることが実証された。 フォノンバンドシミュレーション: 研究分担者・東大・野村Grは、フォノニック結晶における電子-フォノン相互作用に関する知見を深めることを目的とし、初段階として、一次元のSi/Geフォノニック結晶構造において非平衡グリーン関数法を用いた熱伝導解析法を確立した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
フォノン/エレクトロンバンド制御のためのナノ構造形成技術の確立および最適化を行うという目標を、ほぼ達成できた。具体的には、バイオテンプレート技術と無損傷中性粒子ビーム加工技術の組み合わせによる1)配置制御された無欠陥シリコンナノピラー構造の作製、2)マトリックス材料SiGeの埋め込み技術の最適化である。現在、PEG付加フェリチンをマスクに用いた配置制御ナノ構造の作製技術の実用化に関しては、企業との共同研究を通じて進捗しており、トランジスタチャネル構造作製に展開できる精度を達成できた。また、SiGeのCVD成長過程でナノオーダーのギャップにおいてはグレインサイズに対応するため、ほぼ単結晶になることも理解され、高品質なナノピラー複合チャネル構造を実現できた。これらの成果は、ナノピラー複合材料をトランジスタチャネル領域に展開するために画期的な成果であり、このナノ複合材料における電気的、熱的計測技術及びモデリングと組み合わせていくことで、そのエレクトロンおよびフォノンバンド構造等の物理を明らかにできる下地を実現した。また、ナノピラー複合構造という極めて特殊な構造を持つ薄膜の電気物性、熱物性評価技術およびモデリング・シミュレーション基盤を構築できたことは世界的に見ても殆どないと考えられる。 得られた成果は10件の学術論文、14件の国際会議、15件の国内会議で公表されており、順調に研究が進展していることを示している。
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今後の研究の推進方策 |
研究代表者・東北大・寒川GrはSi、Ge、SiGe等材料を用いた周期的NP構造および、複数のMatrix材料を用いた基本構造体の検討、および研究分担者・産総研・遠藤Grとシリコン集積化プロセスとの融合を行い、NP材料・構造、埋め込み材料と集積化デバイス構造における実際のフォノン場およびキャリア移動度との関係を明らかにする。 研究分担者・産総研・遠藤Grは、今後の集積化デバイス試作の計画に関して、2021年度に確立したCMP技術により表面平坦化を行い、ゲート絶縁膜および電極を形成し、Si集積化プロセスとの融合によるデバイス試作を行い、特性評価を実施する。 研究分担者・東京大学・野村Grは、フォノニック結晶系におけるフォノン輸送計算を継続し、フォノンバンド解析、状態密度、輸送特性解析を行う。現在、PoCの観点から一次元フォノニック結晶の解析を行っているが、計算リソースが許容する範囲で二次元フォノニック結晶に拡張可能かを検討する。 キャリア移動度の解析においては、研究協力者・徳増(東北大)および研究協力者・李(台湾交通大)と連携して、これらの小規模の第一原理量子化学計算における電子軌道や電子状態密度の計算を拡張し、大規模かつ複雑なNP構造のエレクトロンバンド計算を行う。 研究分担者・宮崎大学・福山Grは、ナノオーダーステージを自動制御することで検出レーザー照射位置のみをスキャンさせて、材料内で発生したフォノンがどこまで輸送されるかの2次元マッピングを測定するための装置およびソフトウエアの改造を行う。更に、LH-PD法をNP複合材料に初めて適応し、非破壊・非接触で熱波/熱弾性波伝搬の時間分解測定を行う。熱発生用の励起レーザーの照射位置を変えることで、ナノピラーに垂直/成長方向の熱伝搬特性を分離することも試みる。
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