研究課題/領域番号 |
20H05651
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
田畑 仁 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (00263319)
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研究期間 (年度) |
2020-08-31 – 2025-03-31
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キーワード | ガスセンサ / 酸化物半導体 / 多孔質材料 / ナノ粒子 / 嗅診 |
研究実績の概要 |
高感度化とガス選択性の向上を目的として、酸化物半導体ナノ構造と機能性多孔質材料ゼオライトのタンデム型ガスセンサを開発した。ここではセンサ部に脂肪燃焼や糖尿病のモニタとなるアセトンに対して高い検出感度を示すことが知られているWO3ナノ粒子を選択した。平均粒径7 nmのWO3ナノ粒子はデバイ長の2倍よりも小さく、ガス検出に寄与する空乏層がナノ粒子全体にわたるgrain-controlモデルが適用され、高感度化が期待される。さらにガス捕集剤として多孔質材料ゼオライトを用いることにより、ガス濃縮による高感度化と分子ふるい効果による選択性向上が期待できる。ゼオライトは孔径のほか、構成するSi/Al比によって疎水/親水性(極性)が変化し、各ガス種に対してゼオライトとの吸着・脱離/活性化エネルギーを設計可能である。そこでWO3ナノ粒子と空孔サイズの異なる3種のゼオライトのハイブリッド構造ガスセンサアレイを作製し、ゼオライトの分子ふるい効果を利用して複数種のガス検出を実現した。ゼオライトのガス濃縮作用により、50 ppbのアセトンガス検出に対して優れた再現性を示した。抵抗変化の立ち上がりおよび立ち下がりに要した時間は各々3.6秒と0.3秒であった。センサ応用として十分速い応答感度であり,日常活動による放出される体ガスをリアルタイム計測が可能であると同時に、当該センサが繰り返し計測可能な能力を有していることが分かる。さらに主成分分析により、アセトン・エタノール・アセトアルデヒド・アンモニアの複数ガス分類に成功している。 また、ガス検出の高感度化に向けて検出部に用いる酸化物半導体ナノ構造の合成と性能評価を実施した。代表的な酸化物半導体ガスセンサ材料として酸化スズ(SnO2)を対象とし、エレクトロスピニング法によりナノワイヤ(~100nmΦ)を作製し、そのガス応答を評価した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
1)当初計画(1-2年目)では卓上に設置した計測機器を併用したガスセンサによる高感度検出を予定していた。しかし実際には計画より早く小型化・軽量化が進み、想定以上に早くワイヤレス計測によるリアルタイムモニタリングが可能な携帯型デバイス開発、作製まで達成できた。 2)当初の計画では想定していなかった、大学付属病院の協力を得て各種体ガスと特定疾患との相関を評価する臨床研究が開始できた。2)については、様々な機会(研究会やシンポジウムあるいは委員会など)を通じて、当該研究の積極的なアピールに努めたこと。その活動の中で医学系の専門雑誌および学会誌に当該研究を紹介する機会を得たことによる成果である。 1. 月刊誌「細胞」,Vol.54, No.3, pp.33(151)-38(156) (2022) (依頼執筆) 「ヘルスコンディション常時計測用超高感度皮膚ガスセンサ」 2. 糖尿病・内分泌代謝科,第54巻, 1号, pp.10-18 (2022) (招待執筆)「極限ナノテクノロジーと量子計測が拓く非侵襲・無拘束超高感度ガスセンサが嗅診を可能に!」 これらの解説・総説により医療関係に従事しいる研究者に興味を持って頂く事が出来、臨床応用に向けた新しい共同研究が開始することが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
サブppb(ppt)レベルのガス検出感度達成に向けたナノ構造の極限制御 現行の酸化物半導体ナノ粒子(例WO3)をベースとしたセンサは、ボトムアップ技術により作製されているため、~100nmΦのナノワイヤのランダム交叉あるいは~10nmΦサイズのナノ粒子のランダム配列により構成されている。この問題点を克服するため、センサ感度向上の鍵となる素子構造とガス反応サイトを厳密に制御するため、EBリソ技術でナノ構造を形成。1)ナノ構造タンデム素子 1-1)ガスセンシング半導体層 ナノワイヤは、電気抵抗計測を担う下部層(酸化物半導体:n型半導体であるWO3、ZnO、SnO2、TiO2や、p型半導体であるCu2O、NiO等)および、選択的ガス透過層として機能する上部層(ゼオライト等)の2層構造により形成される。酸化物半導体に限定せずが固気界面反応により顕著な物性変化が期待できる2次元系材料(金属カルコゲナイド)、トポロジカル絶縁体(Bi2Te3,Bi2Sn3)、ワイル半金属(WTe2)、グラフェン等も候補とする。 1-2)機能性多孔質材料 ポアサイズが3,4,5ÅのLTA構造ゼオライト3A,4A,5Aは、アセトン、エタノール、アセトアルデヒド、アンモニアの分子種選択に有効な分子ふるいになることが期待される。 ゼオライト以外にも、ナノサイズの規則空孔を設計可能な金属有機構造体(MOF)やナノポーラスシリカ等も候補となる。
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