研究課題/領域番号 |
20H05655
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
久保田 均 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エレクトロニクス・製造領域, 総括研究主幹 (30261605)
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研究分担者 |
薬師寺 啓 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エレクトロニクス・製造領域, 研究チーム長 (10361172)
野村 光 大阪大学, 基礎工学研究科, 准教授 (20506258)
礒川 悌次郎 兵庫県立大学, 工学研究科, 准教授 (70336832)
田丸 慎吾 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エレクトロニクス・製造領域, 主任研究員 (70773802)
宇田川 将文 学習院大学, 理学部, 教授 (80431790)
谷口 知大 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エレクトロニクス・製造領域, 主任研究員 (90635806)
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研究期間 (年度) |
2020-08-31 – 2025-03-31
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キーワード | 人工スピンアイス / 強磁性トンネル接合 / ナチュラルコンピューティング / リザーバ計算 |
研究実績の概要 |
人工スピンアイスは、サブミクロンの強磁性体セルからなるネットワークであり、磁気異方性と磁気的相互作用に起因するフラストレーションが発生し多彩な磁気的性質を示す。本研究では人工スピンアイスを物理リザーバ計算に適用し、高い計算性能と高集積化の両立に道を開く事を目指している。 初年度は、シミュレーションにより人工スピンアイスのリザーバ計算について検討を行った。ハニカム格子状に配置した72個のナノマグネットセルからなる人工スピンアイスに対して、試料中心部の6個のセルの磁化配置を切り替えて入力し、外部磁界によりセルの磁化状態を更新し、すべてのセルの磁化状態を読み出してリザーバ計算を行った。この結果を解析し、短期記憶容量、パリティチェック容量をもちいて性能を評価し、いずれも3程度の容量を示すことが明らかになった。また、磁性ナノワイヤーから構成される人工スピンアイスを用いたリザーバを新規に考案し、性能を評価した。その結果STM/PCキャパシティがいずれも5程度の容量を示した。 実験においては、強磁性単層薄膜を用いた人工スピンアイス試料の作製条件の検討をおこなった。電子ビームリソグラフィー、イオンエッチングによりサブミクロンサイズのセルを形成し、リソグラフィーの工程の条件の検討を重点的に行った。その結果、ハニカム型においては格子点間隔500 nm、ピンホイール型においては300 nmのセル間の距離が小さい人工スピンアイスを作製することができた。また、低温で磁気伝導特性を測定するための装置の設計を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マイクロマグネティックシミュレーションによりリザーバ計算に適した人工スピンアイスの構造を探索し、その結果、比較的高い計算性能を示す素子の構造を見いだすことができた。この結果に基づき次年度は実験的に研究を行予定であるが、そのために必要な磁気光学効果顕微鏡ならびに磁気力顕微鏡の設計・作製を行った。これら装置は、コロナ禍におけるリモート実験を想定したプログラマブルな制御システムが組み込まれている。2020年12月に、使用を予定していた磁気力顕微鏡に致命的な故障が発生したものの、開発中の装置の設計変更等による対応を行った結果、進捗状況は概ね計画通りに順調に進んでいる。 試料作製実験においては、強磁性単層薄膜を用いた人工スピンアイス試料の作製条件の検討を行い、従来よりもセル間の距離が小さい素子の作製ができた。低温で磁気伝導特性を測定するための装置の設計を行った。当初2020年度末に装置納入を見込んでいたが、装置部材の大幅な納期遅延が発生し、2021年前期に調達手続き、下期に納品に計画を変更した。実際2021年度下期には納品され、低温における磁気伝導特性測定の環境を整備することができた。
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今後の研究の推進方策 |
人工スピンアイスを用いたリザーバの実証実験に向け、2020年度はシミュレーションを用いた素子の基本構造の探索ならびに、動作実証実験のための計測・制御システムの開発、微細加工条件等の素子作製技術の開発を行った。2021年度に実施した研究成果と合わせて、今後は強磁性単層磁性薄膜を用いた物理リザーバ計算の実証に取り組む。また、強磁性トンネル接合素子を用いた人工スピンアイス試料の作製と評価、並びに設計ツールの開発を進める。
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