研究課題/領域番号 |
20H05661
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
小坂 英男 横浜国立大学, 大学院工学研究院, 教授 (20361199)
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研究分担者 |
寺地 徳之 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 機能性材料研究拠点, 主席研究員 (50332747)
加藤 宙光 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エネルギー・環境領域, 上級主任研究員(※) (00415655)
松崎 雄一郎 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エレクトロニクス・製造領域, 主任研究員 (10618911)
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研究期間 (年度) |
2020-08-31 – 2025-03-31
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キーワード | ダイヤモンド / NV中心 / 量子ストレージ / 量子メディア変換 / 量子コンピュータ |
研究実績の概要 |
本研究では、NV遠方の深層炭素集団を量子ストレージとし、幾何学的デカップリングによる深層炭素の個別量子もつれ生成、単一光子から単一深層炭素への選択的な量子メディア変換、任意の深層炭素間の量子もつれ測定、量子符号化によるフォールトトレラント化、NVアンサンブルへの拡張による大規模量子ストレージ化を実現する。完全無磁場下で動作する量子ストレージは超伝導量子ビットとの整合性が高く、量子インターネットで接続された量子コンピュータネットワークによる分散型量子計算や秘匿量子計算などに道を拓く。
本年度は以下の成果を得た。 ・幾何学的デカップリングによる深層炭素の選択的量子もつれ生成 量子メモリーに適する表層炭素はNV一つにつき(天然存在比のダイヤモンドでは)2~5個程度ある。一方、量子ストレージに適する深層炭素は通常20個程度であるが、同位体濃縮したダイヤモンドでは100個程度が期待される。深層炭素の核スピンは表層炭素のようにマイクロ波では量子操作できないが、核スピン毎に異なる超微細相互作用(ハイパーファイン)に共鳴する周波数のラジオ波で個別に量子操作できる(DDRF)。しかしながら、これでは電子と狙った炭素間の量子もつれは生成できない。そこで、ラジオ波による炭素核スピンの回転に合わせ、マイクロ波により電子スピンを周期的に反転させることで電子と狙った炭素間の量子もつれを選択的に生成することに、完全ゼロ磁場において成功した。電子スピン反転には独自のホロノミック量子操作と幾何学的スピンエコーを応用した独自の幾何学的デカップリングを用いた。実験で得られた量子もつれ状態の忠実度は平均で75.8%であった。これには測定忠実度が含まれ、もつれ生成の平均忠実度は85%以上と想定される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画していた2020年度の目標である「幾何学的デカップリングによる深層炭素の選択的量子もつれ生成」を達成した。
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今後の研究の推進方策 |
・単一光子から単一深層炭素への選択的な量子メディア変換 電子と狙った深層炭素との量子もつれを生成し、独自の量子もつれ吸収手法(電子の軌道とスピンがもつれ状態にある励起状態への光子吸収による光子と電子の量子もつれ測定)を用いることで、量子テレポーテーションの原理による光子から狙った炭素への選択的な量子状態転写(光子炭素間量子メディア変換)を完全ゼロ磁場において行う。光子から炭素への転写の際、仲介する電子のスピン状態を窒素に転写してシングルショット測定(量子非破壊測定)することで、転写後の炭素の量子状態を破壊することなく転写成功を検知する。また、一方の光子の量子状態を破壊されにくい深層炭素に転写して保管し、深層炭素の量子状態を維持しながら他方の光子の量子状態を表層炭素へ転写できることも確認する。
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備考 |
小坂研究室ホームページ https://kosaka-lab.ynu.ac.jp/
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