研究課題/領域番号 |
20H05664
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
松田 一成 京都大学, エネルギー理工学研究所, 教授 (40311435)
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研究分担者 |
小鍋 哲 法政大学, 生命科学部, 准教授 (40535506)
北浦 良 名古屋大学, 理学研究科, 特任准教授 (50394903)
岡田 晋 筑波大学, 数理物質系, 教授 (70302388)
竹延 大志 名古屋大学, 工学研究科, 教授 (70343035)
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研究期間 (年度) |
2020-08-31 – 2025-03-31
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キーワード | 原子層物質 / 量子光学 / ヘテロ構造 / バレースピン |
研究実績の概要 |
本研究では、原子層物質科学と量子光学の知見を合わせ新たなバレースピン量子光学を創出することにある。我々は、バレースピン自由度を一つの量子状態として見做し制御する新たな道筋を独自に見出しており、これと原子層人工ヘテロ構造からなる究極のゼロ次元量子構造により、バレースピン量子光学の学理を構築し、それを応用へと繋げ新しい研究の潮流を生み出すことを目的としている。当該年度の研究実績は以下の通りである。 [1] 原子層人工ヘテロ構造およびデバイス作製技術の確立 本研究で提案する量子光デバイスの実現に向け、そのプラットフォームである原子層半導体物質によるヘテロ構造作製技術の高度化を進め、高品質なヘテロ構造作製を可能とした。具体的には、グローブボックス中において、複雑な構造を有する原子層人工ヘテロ構造の作製を可能とした。併せて、グラフェン電極を用いてゲート電圧によって、精密なキャリア数制御が可能な人工ヘテロ構造が作製可能となった。 [2] 原子層ヘテロ量子構造の励起子状態と量子光学現象の開拓 原子層人工ヘテロ構造では、そこで生じるモアレ干渉縞により量子閉じ込めポテンシャルを導入し、零次元的な量子状態を持ちうることを実験的に明らかにしている。さらにこの研究を発展させ、原子層人工ヘテロ構造に微細加工を施し、単一のモアレポテンシャルに閉じ込められた励起子(モアレ励起子)を観測することに成功した。これは、量子状態を規定する重要なパラメーターであるコヒーレンス時間に関する情報を得ることに向けた重要な足掛かりとなる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
原子層人工ヘテロ構造の作製技術の高度化と先端分光の光学系の立ち上げが、当初の計画の範囲で順調に進捗した。また、原子層人工ヘテロ構造に微細加工を施すことで、本研究の成否において重要な鍵となる、モアレポテンシャルに閉じ込められた単一のモアレ励起子からの発光を観測するなど、学術的な大幅な進展が得られている。その一方で、単一のモアレ励起子を対象とした研究では、その計測技術もより高度な精度が要求されることが判明し、新しい光学系の構築に取り込んだ。ここで得られた研究成果をベースに、様々な形で学術的にも発展しうるなどの研究進展を考慮し、当初の計画以上に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
現在、昨年度までに稼働させた原子層人工ヘテロ構造作製システムにおいて、作製精度の向上などシステム改良を更に進めており、更に高品質な人工ヘテロ構造作製を可能とることで、研究の進捗を加速する。これと併せて、モアレ励起子のコヒーレンス時間や量子状態制御など、引き続き本研究の最終的な目標である新たな量子光学の構築を行う上での情報を得ること、さらにそこに内在する物理の理解を進める予定である。
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