研究課題/領域番号 |
20H05666
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
鈴木 義茂 大阪大学, 大学院基礎工学研究科, 教授 (50344437)
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研究分担者 |
内海 裕洋 三重大学, 工学研究科, 准教授 (10415094)
野崎 隆行 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エレクトロニクス・製造領域, 研究チーム長 (60452405)
後藤 穣 大阪大学, 大学院基礎工学研究科, 助教 (80755679)
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研究期間 (年度) |
2020-08-31 – 2025-03-31
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キーワード | スピントロニクス / 磁気スキルミオン / 情報熱力学 / ブラウニアン計算 |
研究実績の概要 |
電子の磁石としての性質であるスピンの流れを制御することにより有用な電子デバイスを実現してきたスピントロニクスの分野に「情報流」の概念を導入し、ナノサイズの磁石とその複合系における情報熱力学の学理を構築することを目的として研究を開始した。 前年度に引き続き室温における磁気スキルミオンの熱運動を詳細に調べた。その結果、スキルミオンが熱平衡状態において回転運動をしていることは事実であり、これは、スキルミオンが浅くて比較的大きなポテンシャル揺らぎの中を運動するためであることを明らかにした。我々は通常のビデオカメラで観測しているために、スキルミオンの高速回転を見ることができない。その結果、遅くて大きな逆回りの軌道のみを観察することになる。この結果は高く評価され物理学会誌にHot Topicとして取り上げられ、解説も付け加えられた。 二つのスキルミオンをポテンシャル井戸の中に閉じ込めることによりスキルミオン-スキルミオン相互作用を通してスキルミオン間に流れる情報流を評価した。その結果、情報伝達に有限の時間がかかる様子などを明らかにした。 昨年度の研究において電圧印加素子は作製が困難であったことから電流磁界によりスキルミオンの運動を制御する素子を作製した。このことを用いて、スキルミオンのp-bit動作を示すことに成功した。また、上記の素子において人が顕微鏡でスキルミオンの運動を観察しながら電流を制御することによりスキルミオンを一方向にのみ透過するゲート操作が可能であることを実証した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
スキルミオンのダイナミクスについて大きく理解が進んだ。スキルミオンが熱平衡において回転運動を見出したことは予期していなかった成果である。また、複数のスキルミオンの熱運動においてスキルミオンが間の情報流の評価ができた。電流磁界駆動ではあるが実際にスキルミオンの観察をフィードバックすることによりスキルミオンの微視的な制御に成功した。
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今後の研究の推進方策 |
スキルミオン情報熱機関を作製するために電流が作る磁界を用いたが、消費エネルギーが非常に大きなものとなってしまった。そこで、来年度はもう一度、電圧によるスキルミオンの制御に挑戦する。既に、極細電極によりひずみの影響を避けることを試みたが成功しなかったので、さらに厚い絶縁層の利用などの工夫を行う。また、スキルミオン-スキルミオン相互作用を用いたスキルミオンの制御についてはシミュレーションを用いて研究を進める。
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