研究課題/領域番号 |
20H05683
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
立花 宏文 九州大学, 農学研究院, 教授 (70236545)
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研究分担者 |
藤村 由紀 九州大学, 農学研究院, 准教授 (20390304)
西平 順 北海道情報大学, 医療情報学部, 教授 (30189302)
村田 希 愛媛大学, 学術支援センター, 助教 (50808110)
山崎 正夫 宮崎大学, 農学部, 教授 (80381060)
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研究期間 (年度) |
2020-08-31 – 2025-03-31
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キーワード | 食機能実行分子 / 食品因子センシング / マイクロRNA / 機能性フードペアリング / エピゲノム |
研究実績の概要 |
ヒト血漿中に存在が確認された植物マイクロRNAの機能性について、腸上皮細胞、肝細胞、神経細胞の各細胞株に対する影響を検討し、パーキンソン病に対して予防効果を示す可能性のある植物マイクロRNAを見出した。 食品成分の生体調節作用における環状のノンコーディングRNAであるcircRNAの関与について検討した。具体的には緑茶成分EGCGの経口投与により、マウス肝臓における35 種類のcircRNA発現の発現が変動すること、また、その中で特に発現上昇したcircRNAをマウス肝細胞に強制発現させ、トランスクリプトーム解析を行い、肝線維化や心血管疾患に関与する遺伝子群の発現が変動することを見出した。 ヒトにおける緑茶と柑橘由来ポリフェノールのペアリング効果の実証試験を行うにあたり、ペアリング効果が期待できる適切な摂取量を検討した。EGCGは67LRを介してcGMPを産生しTLR4シグナリングを阻害するTollipの発現を上昇させることで抗炎症作用を発揮する。そこで、マウスの血漿cGMP値の上昇とTollip発現誘導作用を指標として、緑茶と柑橘由来ポリフェノールの組み合わせ量を設定した。この結果に基づき、緑茶と糖転移ぺスペリジンの機能的フードペアリングの有効性をヒト臨床試験により検証した。単独での抗肥満効果が報告されていない量のEGCGと糖転移ぺスペリジンを上記マウス試験の結果から得た比率で混ぜ合わせた茶(以下、ぺスペリジン含有緑茶)を健康な日本人男女を対象に12 週間摂取させた。その結果、ぺスペリジン含有緑茶を摂取した群では、プラセボ群において観察された体重、Body Mass Index及び内臓脂肪面積の増加が抑制された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本課題では、食品中に含まれる分子のみならず、生体や微生物を介して産生された代謝物も含め、生体に作用する食由来の分子群を「食機能実行分子」として捉えるとともに、その相互関係を統合的に理解することを目的としており、本年度は以下の研究項目を実施した。1)食機能実行分子としてのマイクロRNA/circular RNA、2) 食機能実行分子としての食事性植物マイクロRNA、3) 腸上皮細胞における難吸収性ポリフェノールセンサーの同定とその機能、4) 食機能実行分子の機能的相互作用(機能性フードペアリング)の解明。研究実績の概要に示した通り、現在までに各項目において具体的な成果が出ており、成果の一部は原著論文として公表した。
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今後の研究の推進方策 |
ヒト介入試験で得られた血漿サンプルの次世代シーケンス解析により、食品摂取により発現量が変動するマイクロRNAを明らかにするともにそれらマイクロRNAと食品の機能性との関係を明らかにする。 ヒト血漿中に存在が確認された植物マイクロRNAの機能性についてさらなる検討を進めるとともに、疾病原因遺伝子を標的とする可能性のある植物マイクロRNAを探索し、その機能性を明らかにする。 来年度は特に難吸収性ポリフェノールの機能性解明に重きを置いて検討を進める。具体的には、加水分解型タンニンのペンタガロイルグルコースやストリクチニンの生体調節作用明らかにするとともに、加水分解型タンニンセンサー候補分子Xのノックアウトマウスを作成する。
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