研究課題/領域番号 |
20H05688
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
仲嶋 一範 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 教授 (90280734)
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研究分担者 |
田畑 秀典 愛知県医療療育総合センター発達障害研究所, 分子病態研究部, 室長 (80301761)
大石 康二 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 特任講師 (80420818)
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研究期間 (年度) |
2020-08-31 – 2025-03-31
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キーワード | 脳皮質 / 発生・分化 / 形態形成 / 神経細胞 / グリア細胞 |
研究実績の概要 |
大脳新皮質では、領域によって神経細胞の産生時期や細胞構築が異なることが知られている。皮質の三次元的な基本構造が神経細胞移動の制御を通して発生期に構築されていくメカニズムを明らかにする基盤として、まずは移動プロフィールの全体像を明らかにした。従来のチミジンアナログ(TA)を用いた解析では移動の開始点を区別できないため、本研究では移動開始点を明確にするため脳室内に蛍光色素を注入するフラッシュタグ法(FT)を応用した。まずFTが、注入直後に脳室面で分裂する細胞集団のみを高い時間分解能でラベルできることを確かめた。その上で胎生の特定の時期にFTでラベルを行い、2日後にラベルされた細胞の分布を調べたところ、背内側では脳表面に到達していたが、背外側では多くの細胞が移動中間点付近にあるサブプレート下に観察された。この明瞭な領域差は同時に行ったTAによるラベルでは明らかでなかった。様々な時期での観察から、移動プロフィールは発生時期依存的に内外側で異なることが判明した。また、神経細胞移動の領域差の少なくとも一部はサブプレート細胞によって制御されると考えられる結果を得た。 また、アストロサイト前駆細胞を出生直後の生きた個体の脳表面から2光子顕微鏡を用いて観察し、erratic migrationと命名した特徴的な移動や血管に沿った移動がスライス培養のartifactではなくin vivoで確かに存在することを証明した。 さらに、小脳の脳回形成については、プルキンエ細胞に発現するリーリン受容体を阻害することによって障害されることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新しい解析手法を用いて、従来の方法ではわからなかった現象を含め、大脳皮質全体の神経細胞移動プロフィールの全貌を明らかにすることができた。また、これまでスライス培養で見出していたアストロサイト前駆細胞特有の移動様式が、生きた動物でin vivoにおいても観察できることを、難易度の高い2光子顕微鏡を用いて証明できたため。
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今後の研究の推進方策 |
Reelin直下で移動を終えたばかりの細胞群に発現する細胞接着分子を検索したところ、候補分子を見出したので、機能解析を進める。また、アストロサイト前駆細胞の血管に沿った移動を担う分子の候補について、CRISPR/Cas9系とトランスポゾンを使った子宮内電気穿孔法を組み合わせることによって検討する。さらに、アストロサイトの産生自体を制御する因子の解析も進める。
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備考 |
仲嶋一範 中高生向けゼミ "脳が作られるしくみ1(高校1年)"、"脳が作られるしくみ2(中学1年~高校3年)"、栄光学園、鎌倉(神奈川県)、2020年9月2日
世界脳週間2020オンラインイベント「脳学問のすゝめ」(高校生対象):研究講演 仲嶋一範 “細胞たちが脳を作るしくみ” &バーチャルラボツアー (2021年1月24日-3月31日)、ライブイベント「研究者と話そう」(2021年2月7日)
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