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2020 年度 実績報告書

ミトコンドリアの生合成と機能維持を担うタンパク質交通システムの分子基盤

研究課題

研究課題/領域番号 20H05689
研究機関京都産業大学

研究代表者

遠藤 斗志也  京都産業大学, 生命科学部, 教授 (70152014)

研究分担者 田村 康  山形大学, 理学部, 教授 (50631876)
研究期間 (年度) 2020-08-31 – 2025-03-31
キーワードTOM複合体 / SAM複合体 / トランスロケータ / ポリン / クライオ電子顕微鏡
研究実績の概要

本研究では、出芽酵母を中心にミトコンドリアの交通システムと品質管理システムについて、クライオ電子顕微鏡(EM)よる構造解析と構造に基づく生化学的・細胞生物学的解析を一気に進め、タンパク質の交通と品質管理に関する新たな原理を確立することをめざしている。今回は,ミトコンドリアの交通システムを構成する外膜のTOM複合体(ミトコンドリアへのタンパク質の搬入口として働く)とSAM複合体(外膜のβバレル型膜タンパク質の構造形成と外膜への組込みを担う)について,以下の結果を得た。
(1)TOM複合体は3分子のTom40を3分子のTom22が糊付けする形の3量体と、2分子のTom40から成りTom22を欠く2量体が動的平衡にあり,各々通過させる前駆体基質が異なる。この動的平衡は、外膜の小分子チャネルのポリンによって制御されると,われわれは考えている。今回、チャネル活性を保持するが2量体安定化機能に欠損のあるポリン変異体を取得,この変異体はミトコンドリアの呼吸活性には影響を与えない一方、TOM複合体の動的平衡には影響を与え、2量体の基質のミトコンドリアへの取り込みが阻害された。以上の結果からTOM複合体の基質特異性が3量体-2量体の動的平衡により制御されるというモデルが正しいことが証明された。
(2)ミトコンドリア外膜で働くSAM複合体の反応サイクルの様々な分子種について,クライオEM構造を決定し、生化学的解析と組み合わせることで,反応機構を明らかにすることに成功した。特に,基質のβバレル構造形成の機構が、細菌においてβバレル型膜タンパク質の構造形成と膜への組込みを担うBAM複合体の機構とは大きく異なることを明らかにした。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

本研究では、出芽酵母を中心にミトコンドリアの交通システムと品質管理システムについて、クライオ電子顕微鏡(EM)よる構造解析と構造に基づく生化学的・細胞生物学的解析を一気に進め、タンパク質の交通と品質管理に関する新たな原理を確立することをめざしている。今回は,ミトコンドリアの交通システムを構成する外膜のTOM複合体(ミトコンドリアへのタンパク質の搬入口として働く)とSAM複合体(外膜のβバレル型膜タンパク質の構造形成と外膜への組込みを担う)について,以下の結果を得た。
(1)TOM複合体は3分子のTom40を3分子のTom22が糊付けする形の3量体と、2分子のTom40から成りTom22を欠く2量体が動的平衡にあり,各々通過させる前駆体基質が異なる。この動的平衡は、外膜の小分子チャネルのポリンによって制御されると,われわれは考えている。今回、チャネル活性を保持するが2量体安定化機能に欠損のあるポリン変異体を取得,この変異体はミトコンドリアの呼吸活性には影響を与えない一方、TOM複合体の動的平衡には影響を与え、2量体の基質のミトコンドリアへの取り込みが阻害された。以上の結果からTOM複合体の基質特異性が3量体-2量体の動的平衡により制御されるというモデルが正しいことが証明された。
(2)ミトコンドリア外膜で働くSAM複合体の反応サイクルの様々な分子種について,クライオEM構造を決定し、生化学的解析と組み合わせることで,反応機構を明らかにすることに成功した。特に,基質のβバレル構造形成の機構が、細菌においてβバレル型膜タンパク質の構造形成と膜への組込みを担うBAM複合体の機構とは大きく異なることを明らかにした。

今後の研究の推進方策

(1)すべてのミトコンドリアタンパク質の搬入口として機能するTOM複合体については,Tom22を含む2量体のクライオ電顕(EM)構造を決定済みであるが,まだ決定できていないミトコンドリア上で主要な分子種の3量体については,安定に電顕測定用のグリッドを作製することが困難であった。そこでノンストップ(NS)ミトコンドリアタンパク質(ストップコドンを除くことによりリボソーム新生鎖(RNC)複合体を形成する)を細胞内で過剰発現することでRNC複合体と作動状態のTOM複合体との複合体を生成し、TOM-RNC複合体として精製、クライオEM解析に供することを検討する。(2)SAM複合体の動的構造変換と作動機構については、すでにSAM複合体-Tom40の構造形成中間体の構造決定に成功しているので、これ以外の構造形成中間体、他の基質についての構造形成中間体の大量調製、構造解析をめざす。(3)2量体-3量体変換の機能的役割については、2量体の基質である膜間部タンパク質のミトコンドリアへの取り込み量が呼吸条件下で増加することから、2量体が担うミトコンドリアタンパク質取り込みの活性を制御する因子の検索を行う。膜間部タンパク質であるTim9にSBPタグを付加した融合タンパク質の発現系を構築したので、発酵・呼吸条件で培養した酵母からストレプトアビジンビーズを用いて基質を精製し、結合因子を解析する。(4)野生型および変異体ポリンのオリゴマー構造をクライオEMで決定する。決定された構造に基づいて、オリゴマー形成やTom22との相互作用に関わる残基の変異体を作成することで,これまで不明であったオリゴマー構造と機能の関係を明らかにする。

  • 研究成果

    (16件)

すべて 2022 2021 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 1件、 査読あり 5件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 1件、 招待講演 5件) 図書 (1件)

  • [国際共同研究] フライブルグ大学(ドイツ)

    • 国名
      ドイツ
    • 外国機関名
      フライブルグ大学
  • [雑誌論文] Role of the TOM complex in protein import into mitochondria: structural views.2022

    • 著者名/発表者名
      Araiso Y, Imai K, Endo T
    • 雑誌名

      Ann. Rev. Biochem.

      巻: - ページ: -

    • DOI

      10.1146/annurev-biochem-032620-10452

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Crystal structure of Tam41 cytidine diphosphate diacylglycerol synthase from a Firmicutes bacterium.2022

    • 著者名/発表者名
      Kimura K, Kawai F, Kubota-Kawai H, Watanabe Y, Tomii K, Kojima R, Hirata K, Yamamori Y, EndoT, Tamura Y
    • 雑誌名

      J. Biochem.

      巻: 171 ページ: 429-441

    • DOI

      10.1093/jb/mvab154

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Mitochondrial sorting and assembly machinery operates by β-barrel switching.2021

    • 著者名/発表者名
      Takeda H, Tsutsumi A, Nishizawa T, Lindau C, Busto JV, Wenz L-S, Ellenrieder L, Imai K, Straub SP, Mossmann W, Qiu J, Yamamori Y, Tomii K, Suzuki J, Murata T, Ogasawara S, Nureki O, Becker T, Pfanner N, Wiedemann N, Kikkawa M, Endo T
    • 雑誌名

      Nature

      巻: 590 ページ: 163-169

    • DOI

      10.1038/s41586-020-03113-

    • 査読あり / 国際共著
  • [雑誌論文] Phosphatidylserine flux into mitochondria unveiled by organelle-targeted Escherichia coli phosphatidylserine synthase PssA.2021

    • 著者名/発表者名
      Shiino H, Furuta S, Kojima R, Kimura K, Endo T, Tamura Y
    • 雑誌名

      FEBS J.

      巻: 288 ページ: 3285-3299

    • DOI

      10.1111/febs.15657

    • 査読あり
  • [雑誌論文] SAM複合体によるミトコンドリアβバレル膜タンパク質の膜組み込み2021

    • 著者名/発表者名
      竹田弘法,遠藤斗志也
    • 雑誌名

      生物物理

      巻: 61 ページ: 392-394

    • DOI

      10.2142/biophys.61.392

    • 査読あり
  • [学会発表] タンパク質の交通が解き明かすミトコンドリア生合成の仕組み2021

    • 著者名/発表者名
      遠藤斗志
    • 学会等名
      第20回 日本ミトコンドリア学会年会
    • 招待講演
  • [学会発表] (Plenary lecture)Protein machineries that make and maintain mitochondria2021

    • 著者名/発表者名
      Toshiya Endo
    • 学会等名
      35th Annual Symposium of the Protein Society
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] Structural analysis of the mitochondrial protein import gate by near-atomic resolution snapshot and nanoscale video imaging2021

    • 著者名/発表者名
      Yuhei Araiso, Akihisa Tsutsumi, Kenichiro Imai, Takuya Shiota, Hirotatsu Imai, Kana Kuzasa, Noriyuki Kodera, Masahide Kikkawa, Toshiya Endo
    • 学会等名
      第44回日本分子生物学会年会ワークショップ 「多様なミトコンドリアの戦略:強く健康なオルガネラ構築に向けて
    • 招待講演
  • [学会発表] ミトコンドリアにおけるβバレルタンパク質膜挿入の構造基盤2021

    • 著者名/発表者名
      竹田弘法、包明久、吉川雅英、遠藤斗志也
    • 学会等名
      第44回日本分子生物学会年会ワークショップ「生命科学の根幹に迫るミトコンドリアダイナミクスの世界」
    • 招待講演
  • [学会発表] ミトコンドリア外膜蛋白質挿入装置のクライオEM構造2021

    • 著者名/発表者名
      竹田弘法、包明久、吉川雅英、遠藤斗志也
    • 学会等名
      日本顕微鏡学会 第77回学術講演会シンポジウム「クライオ電子顕微鏡による最新の成果」
    • 招待講演
  • [学会発表] High-Speed atomic force microscopy analysis of the mitochondrial protein import gate TOM complex2021

    • 著者名/発表者名
      Kana Kuzasa, Hirotatsu Imai, Noriyuki Kodera, Akihiro Inazu, Toshiya Endo, Yuhei Araiso
    • 学会等名
      第44回日本分子生物学会年会
  • [学会発表] 小分子輸送体ポリンによるタンパク質膜透過装置TOM複合体の機能制御の分子機構2021

    • 著者名/発表者名
      阪上春花,遠藤斗志也
    • 学会等名
      第94回 日本生化学会大会
  • [学会発表] クライオ電子顕微鏡解析によって明らかになったミトコンドリアタンパク質搬入ゲートTOM複合体の構造と機能2021

    • 著者名/発表者名
      荒磯 裕平、包 明久、今井 賢一郎、塩田 拓也、吉川 雅英、遠藤 斗志也
    • 学会等名
      日本生化学会北陸支部 第39回大会
  • [学会発表] 高速原子間力顕微鏡を用いたミトコンドリアタンパク質搬入ゲートTOM複合体の動的構造解析2021

    • 著者名/発表者名
      九笹 加菜、今井 大達、古寺 哲幸、稲津 明広、遠藤 斗志也、荒磯 裕平
    • 学会等名
      日本生化学会北陸支部 第39回大会
  • [図書] ミトコンドリアダイナミクス:機能研究から疾患・老化まで2021

    • 著者名/発表者名
      竹田弘法,荒磯裕平,遠藤斗志也
    • 総ページ数
      458
    • 出版者
      NTS
    • ISBN
      978-4-86043-746-6

URL: 

公開日: 2022-12-28  

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