研究課題/領域番号 |
20H05693
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
審良 静男 大阪大学, 免疫学フロンティア研究センター, 特任教授(常勤) (50192919)
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研究分担者 |
前田 和彦 大阪大学, 免疫学フロンティア研究センター, 特任准教授(常勤) (20332869)
田中 宏樹 大阪大学, 免疫学フロンティア研究センター, 特任講師(常勤) (50747920)
シン シャイレンドラ・クマール 大阪大学, 免疫学フロンティア研究センター, 特任研究員(常勤) (10792187)
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研究期間 (年度) |
2020-08-31 – 2025-03-31
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キーワード | Regnase-1 / mRNA産生制御 / 代謝調節 / 組織恒常性 |
研究実績の概要 |
本年度は研究計画に基づき以下の課題に取り組んだ。 T細胞サブセット特異的Regnase-1欠損マウスの作製と機能解析については、T細胞の活性化から抗体産生B細胞の経路も検討するために、B細胞特異的Cre発現マウスを用いてB細胞特異的Regnase-1欠損マウスを作製し、野生型及び変異マウス由来B細胞の遺伝子発現パターンの比較を通じて、Reganse-1のB細胞特的な標的遺伝子を同定した。NK細胞特異的Reganse-1欠損マウスの機能解析については、シングルセル解析から判明したRegnase-1の標的遺伝子の一つがNK細胞の抗腫瘍活性と強く相関していることを見出した。この遺伝子は抗腫瘍活性に寄与する遺伝子群の転写制御因子であり、Regnase-1は、標的遺伝子の発現制御を通じてNK細胞における抗腫瘍関連遺伝子の転写および発現の制御を行っていることが判明した。ヌクレアーゼ活性阻害変異マウスの機能解析については、このマウスが肺においてGlanuloma様の構造体を形成すること、これが変異マウス由来T細胞の肺組織への浸潤が引き金となって起こることを見出した。またこのマウス由来のT細胞は、Regnase-1遺伝子欠損マウス由来のT細胞と同様にエフェクター・メモリー化が進んでおり、各臓器及び末梢血において長期間生存することが判明した。臓器特異的Regnase-1欠損マウスの作製と解析については、肝細胞特異的Cre発現マウス及び褐色脂肪細胞特異的Cre発現マウスとRegnase-1 floxマウスを交配することで、肝臓及び脂肪組織特異的にRegnase-1を欠損するマウスの作製に成功した。これらのマウスに対して細胞及び組織ストレスを付与するマウスモデル(肝臓:非アルコール性肝障害モデル、脂肪組織:低温ストレスモデル)を適用し、それらの疾患症状の進展を現在評価している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
概ね順調に進行している 研究実績の概要に記載している各研究課題について、設定していた目標の達成に向けて現在順調に進行していると判断できる。T細胞サブセット特異的Regnase-1欠損マウスの作製と機能解析については、これまで作製したマウス由来T細胞に対するシングルセル解析やRNA-seq等の網羅的解析のデータが蓄積しており、各サブセット間における遺伝子発現の差異に関する知見が得られつつある。これを継続することによって、T細胞分化におけるRegnase-1の機能的役割を解明することは可能であると考えている。NK細胞特異的Regnase-1欠損マウスについては、NK細胞におけるRegnase-1の標的遺伝子が同定され、その遺伝子による抗腫瘍活性増強の分子メカニズムが解明されつつある。Regnase-1のヌクレアーゼ活性阻害変異マウスの機能解析については、これらの変異に伴う病態の原因が解明され、原因となる細胞のRegnase-1の変異による活性化や分化に与える影響も明らかになりつつある。またMalt1プロテアーゼ切断阻害変異マウスの機能解析については、変異の影響を評価するための疾患モデルが決定できたので、今後はこの疾患モデルにおける細胞機能の解析に取り組むことによって、詳細な機能を解明することが可能であると考えられる。臓器特異的Reganse-1欠損マウスの解析については、細胞ストレスを付与する動物モデルの解析とRegnase-1の標的遺伝子の探索を通じて、Regnase-1と組織の恒常性維持との機能的関連の解明を目指す。またRegnase-1活性を阻害する低分子化合物の探索についても、化合物のライブラリーが得られ次第、スクリーニングを実施する体制が整っている。
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今後の研究の推進方策 |
次年度以降の研究計画については、以下の計画を実施する予定である。 各種T細胞サブセットおよびNK細胞におけるRegnase-1の機能的役割の解明については、それぞれシングルセル解析によって見出された、Regnase-1遺伝子欠損により発現量が変化する遺伝子群の中から、Regnase-1のRNase分解を直接受ける標的遺伝子を同定する。また標的遺伝子の機能解析を通じて、これらの遺伝子の発現制御とT細胞やNK細胞の機能との関連の解明を目指す。Regnase-1のヌクレアーゼ活性阻害変異マウスの機能解析については、上記の計画と同様のアプローチでT細胞におけるRegnase-1の標的遺伝子の同定を試みる。さらに標的遺伝子とそれに関連する遺伝子の発現パターンの解析を通じて、ヌクレアーゼ活性阻害変異におけるT細胞のエフェクター・メモリー化の分子機構の解明を目指す。Malt1プロテアーゼ切断阻害変異マウスの機能解析については、Balb/cバックグラウンドの変異マウスを用いて、アレルギー性疾患モデルの増悪の原因をより詳細に検証する。肝臓及び脂肪組織特異的なRegnase-1欠損マウスの解析については、各々細胞及び組織ストレスを付与するマウスモデルを適用して、疾患症状の進展を野生型マウスと比較する。それらのマウスの解析や標的遺伝子の探索を通じて、臓器を構成する細胞の恒常性維持とメッセンジャーRNAの細胞内安定性との機能的相関を明らかにする。Regnase-1のRNase活性を阻害する低分子化合物の探索については、組み換えReganse-1蛋白質と標的配列を含む化学合成RNAを用いて、低分子化合物スクリーニングを実施するための評価系の確立を目指す。
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