研究課題
糖代謝は個体レベルで厳密に制御されており、その乱れが糖尿病発症につながる。研究代表者らは、この制御に神経を含む臓器間ネットワークが重要な役割を果たしていることを報告してきた。本研究では、これまでの自らの成果を基盤とし、特に、糖新生を中心として、個体レベルで糖代謝恒常性維持に関わる新たな臓器間ネットワークについて解明を進める。肝を中心とする糖新生臓器からの全身へのシグナルや他臓器からの糖新生制御に関わる臓器間シグナルを見出し、時々刻々と変化する全身の糖利用に応じ、低血糖を未然に防ぎ血糖値を一定に保つために全身の臓器がどのように連携しているかを解き明かすことを目的として研究を推進する。そこで、本年度は、各糖新生経路について、糖新生を司る個々の臓器(肝・腎・小腸)での誘導性欠損マウスの作製に着手した。さらに、臓器間ネットワークの解明に向け、特に肝臓における人為的神経制御を行う手法の開発を進めた。その結果、以下の3点で大きな成果が得られた。①オプトジェネティクスの手法を末梢神経に適応し、肝に投射する迷走神経のみを活性化するシステムの確立することに成功した。②それぞれの糖新生経路の律速酵素であるGyK、Pck1、Pck2の発現アデノウィルスおよび肝臓での誘導性欠損マウスを作製することに成功した。③小腸や腎での誘導性組織選択性欠損のCreマウスの飼育を開始できた。これらにより、肝・腎・小腸といった糖新生を行うそれぞれの臓器で各糖新生経路の遮断や活性化を行うことが可能となり、次年度以降の個体レベルでの解析を進める準備が整った。さらに、このシステムに神経系の活性化および抑制の実験系を組み合わせることで、各糖新生臓器由来の代謝シグナルが全身に伝わるメカニズムの解明を進めることが可能となった。
1: 当初の計画以上に進展している
当初の予定よりも早く、糖新生経路の律速酵素の誘導性欠損マウスを作製することができ、すでに、その代謝表現型の解析に着手できていることから。
本年度に確立できた手法や遺伝子改変マウスを用いて、肝などの糖新生の変化が全身の代謝に及ぼす影響についての解明を推進する。①オプトジェネティクスの手法により、肝に投射する迷走神経のみを活性化するシステムが確立することに成功したため、これを用い、迷走神経の活性化が糖新生酵素の発現に及ぼす影響、糖新生自体の与える変化を検討する。②糖新生経路の律速酵素GyK、Pck1、Pck2の発現アデノウィルスおよび肝臓での誘導性欠損マウスを作製することに成功したため、これらの肝臓での誘導性欠損マウスにおける個体レベルでの変化を検討する。③小腸や腎での誘導性組織選択性欠損のCreマウスの飼育を開始できたため、②で記載したfloxマウスとの掛け合わせにより、各糖新生経路の腎や小腸での抑制を誘導し、一臓器単独および複数臓器での欠損マウスの検討を進める。
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すべて 雑誌論文 (13件) (うち査読あり 6件、 オープンアクセス 6件) 学会発表 (9件) (うち招待講演 9件)
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