研究課題/領域番号 |
20H05697
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
椛島 健治 京都大学, 医学研究科, 教授 (00362484)
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研究分担者 |
大日 輝記 香川大学, 医学部, 教授 (20423543)
本田 哲也 浜松医科大学, 医学部, 教授 (40452338)
國澤 純 国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所, 医薬基盤研究所 ワクチン・アジュバント研究センター, センター長 (80376615)
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研究期間 (年度) |
2020-08-31 – 2025-03-31
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キーワード | 皮膚免疫 / 皮膚バリア / 生体イメージング / 三次リンパ組織 |
研究実績の概要 |
申請者は、誘導型皮膚関連リンパ様組織 (inducible skin-associated lymphoid tissue; iSALT) が皮膚局所免疫応答の重要な場となる可能性を提唱し、その検証を図っている。また、皮膚の炎症と全身の状態が相互にクロストークすることが臨床的に知られているが、機序や意義の詳細は不明な点が多い。そこで本研究の目的は、iSALTという皮膚を場とする外的侵襲に対する生体応答を上皮細胞-免疫細胞-間質細胞の3者と皮膚常在菌の観点から理解することにある。また、外的侵襲に対する多彩な生体応答とそれにより引き起こされる皮膚疾患の発症という因果関係を検討する。さらに、小動物で得られた結果をヒトで再検証し、ヒトの炎症性皮膚疾患の発症機序の解明に迫る。 今年度は、本研究では、個細胞RNAシークエンスや皮膚疾患マウスモデルを用いて、皮膚の炎症と個体の生命反応をiSALTの概念を切り口に検討した。まず申請者らは、遺伝子改変マウスや蛍光ラベル法の開発により、マウスとヒトの皮膚の構成細胞・構造物・細胞機能を可視化し、生体応答のダイナミズムを非侵襲的に解明できる基盤技術を確立した。また、iSALT形成において、高毛細血管領域に存在するPNAd陽性の高内皮静脈が誘導され、これを介して多彩な免疫細胞が中長期にわたって皮膚に流入かつ生存することを見いだした。同部位には、アトピー性皮膚炎などの慢性炎症性皮膚疾患の形成に重要な役割を果たすレジデントメモリー細胞も存在することを見いだした。 以上の研究成果は、皮膚の組織構築の理解や各種皮膚疾患の病態の解明へと展開することが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究計画は、予定通りに進められてきたが、iSALTが、レジデントメモリーT細胞の局在と生存に重要な役割を果たすことを見いだした点は、当初の計画にはなかったものである。さらに、生存に必要なケモカインシグナルも同定したことより、今後の臨床応用への可能性も示唆されたため、当初の計画以上に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、皮膚と腸管免疫のクロストークと、マウスの研究成果のヒトへの応用の可能性について検証を行うことを予定している。 まずは、多様な皮膚免疫応答の誘導におけるiSALTの形成機序と役割の解明を図る。ヒト病理組織サンプルを用いたiSALTのinductive siteとeffector siteを同定する。また、マウス実験での様々な異なった炎症惹起とタイムポイントでのiSALTの解析を行い、さらに、DTHモデルを用いたTrmとcDC2からなるiSALTの解析を進める。現在iSALTの概念が拡張されつつあるため、その他B細胞分化や獲得免疫に対する関与に関しては、今後の展望であるとともにそれらの分子機構の解析を進める。 次に、腸管と皮膚の免疫学的クロストークにおける分子機構の解明を目指す。ヒトのデータも含め、iSALTは皮膚にnaive BおよびT細胞を含んだ構造あることを確認している。よって、マウスの皮膚炎症モデルでPNAd+高内皮細静脈が誘導された場合、naive T細胞の特異的な皮膚への流入経路となり得るかを検討する。 最後に、ヒト研究への展開に向けた基盤を形成する。当研究室は皮膚構造物・構成細胞の可視化や病理組織の三次元可視化を可能にするイメージング技術は既に導入済みである。今回、3次元ヒト表皮モデルを確立したことで、これらを合わせて今後は、機能的、診断学的イメージングの確立や、皮膚のイメージングと細菌叢の紐付けを行う。以上より、皮膚構成細胞・構造物やシグナル伝達などの細胞機能を包括的に可視化するシステムを小動物およびヒトで確立し、皮膚を場とする生理的現象を解明する。これらの研究成果を介して、皮膚の組織構築の理解や各種皮膚疾患の病態の解明へと展開させる。
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