研究課題/領域番号 |
20H05701
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
野村 慎一郎 東北大学, 工学研究科, 准教授 (50372446)
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研究分担者 |
瀧ノ上 正浩 東京工業大学, 情報理工学院, 准教授 (20511249)
清水 義宏 国立研究開発法人理化学研究所, 生命機能科学研究センター, チームリーダー (90401231)
大野 博久 京都大学, iPS細胞研究所, 特定拠点助教 (90612391)
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研究期間 (年度) |
2020-08-31 – 2025-03-31
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キーワード | オートマター / 人工細胞 / 自己複製 / 大量生産 / 電子-分子インタフェイス |
研究実績の概要 |
オートマター実現に向けた4つのサブテーマとその統合について以下のような進展があった。[サブテーマ1]自己複製溶液の構築を行うために、分担者・清水らのグループは巨大複合体のリボソームの自己組織化条件を探索している。これまでに報告したリボソーム小サブユニットに続いて、2種類のrRNAおよび33種類のリボソームタンパク質からなる大サブユニットに注目し、タンパク質合成活性を持つ構造を世界で初めて自己組織化させることに成功し報告した。[サブテーマ2]人工多細胞構造のプログラム可能性を実現するために、大野グループでは内部状態を時間的・空間的に制御する分子システムの開発に取り組んでいる。本年は特に空間制御システムとして、RNAを分子足場として特定の入力分子に応じた人工細胞内分子の空間配置制御を行うことを目指した。入力分子特異的な分子足場の形状変化を実現するため、リボスイッチやタンパク質結合RNAモチーフを組み込み、特定の入力分子によって形状変化を制御できる構造体を構築し論文準備中である。[サブテーマ3]人工多細胞の自動量産技術の確立を目指し、嵩高い脂質分子を用いることで全長がmm以上におよぶ人工多細胞構造が簡便かつ大量に得られること、さらにその調製操作が自動化できることを示した(論文採択済)。そしてサブテーマ1との連携で、内部でPUREタンパク質発現が可能であることを示し、「目で見て手で触れる」世界初の人工多細胞の例といえる。[サブテーマ4]オートマターの回路となる分子システムの外部操作可能性を求めて、瀧ノ上グループでは核酸を材料とした操作可能な機構を構築している。光応答性人工核酸を用いることで、分解・融合が制御可能なDNA液滴を実現した。これを電気信号に代わる外部刺激として研究を進め、報告した。以上の成果は、本課題が目指す自動微粒子群・オートマター実現に向けた重要な実績である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
代表者・野村グループにおいて人工多細胞体の自動合成に関する研究が進み、mmスケール以上のサイズでの調製に成功した.これによって「目で見て手で触れる」ような人工多細胞構造を実現することが出来た(論文採択済)。さらに、自己複製を行う人工細胞を構築する上で最大の課題のひとつとされているタンパク質合成(翻訳)酵素・リボソームの自発的再構成が,大小2つのサブユニット共に,分担者・清水グループによって実現された。これによって、分子システムが自分自身を作り出す、いわゆる自己複製スープを実証する道が拓かれたとみなせる。これらは研究開始当初は最低でも3年はかかると予想していた結果であり、本課題が当初の期待以上に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
下記4つのサブテーマについて研究を進め、その成果の統合を目指す。 サブテーマ1:人工的に調製した構成要素によってリボソームの組織化を行うためには、rRNAの修飾状態を人工的に制御可能にする必要があることから、リボソームの機能に必須なRNA修飾塩基の探索研究を行い、自己複製溶液の実現を目指す。 サブテーマ2:これまでに構築した分子制御システムを発展させ、自律的な遺伝子発現周期を有するシステム、およびその外来分子による制御機構を開発する。それらをPURE system複製系とリンクさせ、人工細胞を単位とした自己複製の制御を目指す。また、RNA足場分子を用いて膜結合タンパク質の密度や三次元配置、配向を制御し、人工細胞膜の形状変化・極性の制御に挑戦する。 サブテーマ3:人工多細胞体の自動調製システムと、コンパートメント間相互作用/内外情報伝達システムの実現に注力する。自動調製システムのロボット操作による実現を目指しつつ,人工多細胞体のスケールに応じた巨視的な動作を取り出す(並進運動,物質交換)研究を進める。 サブテーマ4:外部制御可能な分子デバイスとして、光応答性核酸液滴の開発を進める。これまでに実現したDNA液滴の均一なサイズでの生成(単分散性)と直接的な操作の研究をさらに進め,人工多細胞体に導入できる新しい高機能DNA液滴の開発に取り組む。 以上のサブテーマを各チームで進めることに加えて、今後テーマ間の連携を深める。特に、サブテーマ1での自己複製機構の試験管内実装と、他のサブテーマとの統合を積極的に進める。分子的・外的な制御と、人工多細胞体内部での機能評価を進める予定である。 これらを通じて、分子的・外的に制御可能な自己複製機構を有する人工多細胞体・オートマターのプロトタイプ構築を目指す。
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