研究課題/領域番号 |
20H05702
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研究機関 | 宇都宮大学 |
研究代表者 |
山本 裕紹 宇都宮大学, 工学部, 教授 (00284315)
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研究分担者 |
吉浦 康寿 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 水産技術研究所(廿日市), 主任研究員 (90372052)
石川 智治 宇都宮大学, 工学部, 教授 (90343186)
陶山 史朗 宇都宮大学, オプティクス教育研究センター, 特任教授 (70457331)
伊藤 篤 中央大学, 経済学部, 教授 (80500074)
大谷 幸利 宇都宮大学, 工学部, 教授 (10233165)
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研究期間 (年度) |
2020-08-31 – 2025-03-31
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キーワード | 空中ディスプレイ / 水中ディスプレイ / 再帰反射素子 / 偏光 / 解像度 / 水産養殖 / 深層学習 / 個体識別 |
研究実績の概要 |
空中ディスプレイに関する新しい光学系の開発と解像度の測定実験を行った.再帰反射による空中結像(AIRR:aerial imaging by retro-reflection)により,何もない空中に映像を形成できるが,従来のAIRRの課題はハーフミラーにおける光損失である.そこで,ハーフミラーの代わりに反射型偏光板を用いることで,S偏光成分を反射させてP偏光成分を透過させる.再帰反射素子の表面には1/4波長フィルムを設けることでS偏光をP偏光に変換する.しかしながら,すべての波長・すべての入射方向に対して理想的な偏光変調が行われるわけではないため,最適化が課題である.偏光カメラを用いて偏光分布を明らかにする実験を行い,分離に適した光学配置を明らかにした.さらに,合わせ鏡構造をAIRRに導入することで単一の光源を2次元に展開して多重結像する光学系を明らかにした. 空中映像の画質が再帰反射素子の回折の影響を受けることが顕著であることがわかったため,大きな開口を有する再帰反射素子を開発して,長浮遊距離における空中像の広がりを低減できることを実証した. 高産肉性トラフグの親魚養成を継続して,骨格筋増強による「マッスルフグ」の育成を行った.AIを用いてトラフグの個体識別を行う学習データを取得し,フグの撮影結果から個体識別を実現するニューラルネットワークを構築した. さらに,メダカに対してAIによる個体識別を行う学習データの取得と実験を行い,個体識別に成功した. 光工学分野の展示会(光とレーザーの科学技術展),国際会議IDW (International Display Workshops)および応用物理学会においてデモ展示を行ない,本研究課題の派生技術の実用化や社会実装を進めるためのアウトリーチ活動を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
空中ディスプレイは,広い範囲から光を集束させることで何もない空中に映像を形成する技術であり,本研究では空中ディスプレイの高画質化と薄型化を実現する光学系を開発する.薄型化された空中ディスプレイを水槽の中に設置して,水中映像空間(水中CAVE)を実現して,魚への水中映像提示の有効性を実験により明らかにすることを本課題の目的としている.具体的には,光工学・生物学・水産学・感性メディア工学・情報工学の研究者による異分野融合により次の6つの課題を解決することを目標としている.①再帰反射による空中結像(AIRR)に偏光変調と多重反射を導入して薄型化を実現する.②水中CAVEを世界で初めて実現する.③水中の映像に対するヒトの奥行き知覚特性を明らかにする.④水中CAVEシステムを魚への刺激映像の提示に用いたVR動物学実験を行う.⑤養殖水槽のリモート監視システムを構築して⑥養殖魚の平均体長・平均体重を推定するシステムを構築する. これらの6項目に対して目標達成に向けて計画通りに進めていたが,関連する空中結像の光学系に関して外国企業の特許出願が公開されたことを受けて,アレイ状光学素子に関する光学シミュレーションを行い,先行発明より高い結像性能の得られる光学系を考案した.派生技術に関する産学連携や社会実装について当初の計画以上に進展している.
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今後の研究の推進方策 |
空中結像光学系の解像度の測定方法として,斜めナイフエッジ法による変調伝達関数(MTF)の測定法を使用してきた.しかしながら,斜めナイフエッジ法をディスプレイなど単位素子の繰り返し構造にも適用する場合には繰り返し構造の部分平滑化のフィルタリング関数を一意に定めることが困難であることから,国際標準にそのまま適用することが難しい.そこで,線広がり関数を元にするMTF測定法を新たに導入することで,学術研究の成果を国際標準の創成につなげることで研究の応用展開を加速する. コロナ禍を受けて非接触技術への注目が得られているところであり,関係分野の展示会出展や講演などの機会を通じて派生技術の社会実装に向けたアウトリーチ活動を積極的に進める.
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