本研究は膜間部タンパク質の外膜透過の分子機構の解明を目的とする。これまでの申請者の研究で、ミトコンドリアの膜間部タンパク質のインポート効率が呼吸条件依存的に促進することがわかっている。申請者はミトコンドリアの活性をより必要とする呼吸条件で、膜間部タンパク質のインポートを促進する未知の因子があると考え、当該年度は因子の同定を目指した。Twin CXXXCモチーフを有する膜間部タンパク質は、外膜のTOM複合体を透過した後、内膜のMia40によってシステインが酸化され、膜間部で成熟する。内膜のNアンカータンパク質であるMia40のC末端に、TurboIDを付加した融合タンパク質を発現する酵母株を作製し、Mia40周辺に近接するタンパク質の近接ビオチン化を試みた。ミトコンドリアの可溶化液には多種のビオチン化タンパク質が含まれていたため、可溶化液をグリセロールの密度勾配遠心を行い、Mia40と同じ画分に分画されるビオチン化タンパク質を濃縮した。ビオチン化タンパク質を質量解析した結果、ミトコンドリアの電子伝達に関与する因子が複数ヒットした。候補のうち、X遺伝子を欠損させた酵母株で、呼吸条件において膜間部タンパク質のインポート後のステップに影響がみられた。先行研究で、野生型酵母における因子Xの発現量は発酵条件と比較して、呼吸条件では約9倍上昇することがわかっている。以上のことから、因子Xは呼吸条件で発現量が増加することで、膜間部タンパク質の成熟化に寄与していると考えられる。今後は因子Xが膜間部タンパク質の成熟化のどのステップで関与しているか、分子メカニズムの詳細を明らかにする必要がある。
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