現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1) 自動回転式ドラムサンプラーの設計・作製 既報研究(e.g. Wurl 2009; Cunliffe & Wurl 2014)を参考にしてドラムはアクリル製(PMMA)で直径 25 cm, 長さ 45 cmとし、モーターのコントロールユニットを備えたバッテリーも合わせて作製した。相模湾真鶴沖で試運転を実施したが、ドラムサンプラーが安定して海水に浮かばなかった。そこで、ドラムサンプラーの重さと浮力を調整して再び試運転を実施したところ、ドラムを10 rpmで回転させることによって海面ミクロ層を採取することができた。 (2) 黄砂からの無機栄養塩溶出実験 国立環境研究所からゴビ黄砂(環境標準物質 No. 30)を入手した。超純水 1 Lに黄砂を0, 1, 10, 50, 100 mg L-1(最終濃度)となるように添加し、暗所で培養した。0, 2, 12, 24, 48, 96 h後にサンプリングを行い、pHを測定するとともに、無機栄養塩のサンプルを採取した。 (3) 海水への黄砂添加実験 3月から集中的に(1-2週間に1度)海水への黄砂添加実験を実施した。相模湾真鶴沖(深度 120 m)において調査を行い、ドラムサンプラーと横型ニスキン採水器を用いて海面ミクロ層と海面直下(水深 0.5 m)の海水をそれぞれ採取した。採取した海水を石英瓶に入れて0, 8, 80 mg L-1(最終濃度)となるように黄砂を添加し、現場の水温・光条件で培養した。0, 24, 48 h後にサンプリングを行い、無機栄養塩濃度、細菌現存量・生産量・群集構造、従属栄養性ナノ鞭毛虫現存量、クロロフィルa濃度などのサンプルを採取した。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、昨年度に引き続き、(1) 黄砂からの無機栄養塩溶出実験、(2) 海面ミクロ層への黄砂添加実験を実施する。以下にそれぞれの概要を示す。 (1) 黄砂からの無機栄養塩溶出実験 海水1 Lに黄砂を0, 1, 10, 50, 100 mg L-1(最終濃度)となるように添加し、暗所で培養する。0, 2, 12, 24, 48, 96 h後にサンプリングを行い、pHを測定するとともに、溶存態有機炭素(DOC)、無機栄養塩、微量金属のサンプルを採取する。東京大学 大気海洋研究所または創価大学において、DOC濃度、無機栄養塩(NO3, NH4, PO4, SiO2)濃度、微量金属(Fe, Cuなど)濃度を測定する。 (2) 海面ミクロ層への黄砂添加実験 下出 准教授(横浜国立大学)と桑原 教授(創価大学)と共同で、4月から6月まで集中的に(1-2週間に1度)実験を実施する。相模湾真鶴沖(深度 120 m)において調査を実施し、自動回転式ドラムサンプラーと横型ニスキン採水器を用いて海面ミクロ層と海面直下(水深 0.5 m)の海水をそれぞれ採取する。採取した海水を石英瓶に入れて0, 8, 80 mg L-1(最終濃度)となるように黄砂を添加し、現場の水温・光条件で培養する。0, 24, 48 h後にサンプリングを行い、無機栄養塩濃度、細菌現存量・生産量・群集構造、従属栄養性ナノ鞭毛虫(HNF)現存量、クロロフィルa濃度などのサンプルを採取する。東京大学 大気海洋研究所または創価大学において、無機栄養塩(NO3, NH4, PO4, SiO2)濃度、細菌現存量・生産量・群集構造、HNF現存量、クロロフィルa濃度の測定・解析を行う。また、得られる結果をまとめ、国内・国際学会で発表を行うとともに、国際学術雑誌に論文を投稿する。
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