研究実績の概要 |
実簡約代数群Gとその閉代数部分群H、Gの放物型部分群Qに対して次の三条件を考える。 (i_Q)旗多様体G/Q上の関数空間の部分商として実現できる既約表現を、等質多様体G/H上の関数空間が有限重複度でしか含まない。 (ii_Q)G/H上に開Q軌道が存在する。 (iii_Q)G/H上のQ軌道が有限個しか存在しない。 QがGの極小放物型部分群Pのときにはこれら三条件が同値であることが知られている。一般の放物型部分群に対しては(i_Q)と(ii_Q)の関係性が簡単な考察からわかる。また昨年度までの研究により(iii_Q)から(i_Q)は従わない、特にHが可解群となるような反例が存在すること、また(i_Q)から(iii_Q)は向き付けに関する仮定の元で従うことが分かっている。昨年度までの結果により、一般旗多様体G/Q上に向き付け可能なH軌道が無限個存在すれば、その軌道上での微分形式の積分を考えることにより、G/Q上の退化主系列表現からG/H上の関数空間へのG絡作用素が無限次元分構成できることが分かっている。 本年度は昨年度に引き続き上記主張の向き付けに関する仮定を外すための研究を行った。これに関しては、現行の証明では上記のように積分を考えているため向き付けの仮定を本質的に用いていること、また多くの例では、もし考えている軌道が向き付け不可能であっても、退化主系列表現の方を適切なQの指標でひねることで、その軌道上での積分を定義できてしまい、本質的な反例になっていなことが問題点となっていた。今年度はこれに関し、どのようなQの指標で捻っても、その軌道上での微分形式の積分を定義できないような(G,H,Q)の組みが存在することを発見した。
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