研究実績の概要 |
私はこの数年間で,リー群Gとその部分群G_1の組(G,G_1)が正則型対称対の場合に,Gの正則離散系列表現HからG_1の正則離散系列表現H_1へのG_1-絡作用素 (対称性破れ作用素) F:H→H_1を,Gが単純リー群,Hがスカラー型,H_1も (スカラー型を含む) 比較的簡単な表現の場合に,微分作用素として具体的に構成した.またその過程で,(G,G_1)の付随対称対 (G,G_2)に対し,エルミート対称空間G_2/K_2上の比較的簡単な多項式f(x_2)について,多項式det(x_2)^kf(x_2)とG/K上の指数関数e^(x|z)との,G/K上での内積を具体的に計算した.特にf(x_2)=1の場合 (H_1がスカラー型の場合に相当) には,この結果がHeckman-OpdamのBC型多変数超幾何多項式を用いて与えられることを示した. 昨年度までは主に(G,G_1,G_2)=(Sp(r,R),U(r',r''),Sp(r',R)×Sp(r'',R))など,G_2が2つの単純リー群の直積の場合について,今年度は主に(G,G_1,G_2)=(SU(r,r),SO^*(2r),Sp(r,R))など,G_2が単純リー群の場合について扱った. さらにこの内積を具体的に計算したことにより,正則離散系列表現H=H(λ)の連続パラメータλに関する解析接続を考えると,そのλに関する極の位置を具体的に決定できる.ここから,正則離散系列表現H(λ)を解析接続してできる表現が可約となる場合にも,これを部分群G_1に制限した際の分岐則に関する情報を得ることができた. またこの計算の結果,既知の多変数超幾何多項式,およびそれを自然に一般化した関数が現れたことから,この研究は多変数特殊関数論にも影響を与えると期待している.
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