研究課題/領域番号 |
20J00134
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
宇佐美 達朗 大阪大学, 人間科学研究科, 特別研究員(PD)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-24 – 2023-03-31
|
キーワード | シモンドン / 技術論 / 自然 |
研究実績の概要 |
2年目となる2021年度もまた、変異株の流行もあり、初年度と同様に新型コロナウイルス感染症の影響が大きな年となった。 本年度の研究は、おもに国内の学会や雑誌媒体においておこなわれた。日仏哲学会の秋季大会(オンライン開催)での発表は、シモンドンの主著のひとつである『技術的対象の存在様態について』を取り上げ、そこで用いられる「技術性」概念に着目することで、技術と人間と自然の混淆性をシモンドンがいかに考えていたかを検討するものである。シモンドンのこの著作にはある種の「人間主義」的な側面が指摘されてきたが、それはたんに人間のイメージを自然や技術に当て嵌めるのではなく、むしろそれとは逆の方向から人間という生物の活動を捉えなおすという意味で顛倒した人間主義であるというのが、本研究の主張となる。 また『現代思想』の「ポストモダン」特集号(2021年5月号)に寄稿した論文では、ジャン=フランソワ・リオタールの1979年の著作『ポストモダンの条件』に科学論的な文脈を指摘したうえで、そうした知あるいは教養の問題としてシモンドンの議論に接続することを試みた。シモンドン自身の「教養」のテーマについてはさらに考察を進める必要があるが、ブリュノ・ラトゥールらとの議論と合流するような地点が示された。 くわえて、第3回フランス・エピステモロジー研究会において、シモンドンの技術論を生命論であり宇宙論であるようなものとして捉える可能性について発表する機会を得た。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度に引き続き、新型コロナウイルス感染症の世界的な大流行により、予定していたフランスでの資料調査をおこなうことができなかったため。また、シモンドンの講義録の検討に十分な時間と労力を割くことができていないが、これは『技術的対象の存在様態について』に予想以上のアイデアが見いだされ、その検討に注力したためである。
|
今後の研究の推進方策 |
前年度に引き続き、可能な範囲で資料を収集するとともに研究を進め、感染状況の改善がみられたタイミングで渡航をおこなう。 『技術的対象の存在様態』の翻訳作業を進め、そこに含まれるアイデアを展開しつつ、それをより大きな文脈に位置づけることをめざす。
|