測度距離空間およびその拡張概念であるピラミッドに関して,以下の3つの研究を行った. 1つ目の研究は,次元が無限大に発散する球面列および射影空間列がリーマン多様体として適切なスケールで無限次元ガウス空間およびそのホップ作用の商に収束することを示したものである.球面や射影空間がユークリッド距離を持つ場合には同様の収束が既に知られていたが,従来の方法をリーマン距離の場合に適用するのは困難であった.本研究では全く新しいアプローチとして,距離を変換した際に空間列の収束性がどう変化するかを研究し,一般論を構築し,その帰結として上記の重要な収束列の例を得ることができた.この結果をまとめた論文がIsrael J. Math.から出版予定である. 2つ目の研究として,対数ソボレフ不等式の最良定数について測度距離空間の集中位相に関する連続性を調査した.本研究では,対数ソボレフ不等式の最良定数を1パラメータで近似した量に対して,熱半群の超収縮性の仮定の下で十分な連続性があることを示すことができた.熱半群の超収縮性はやや強力な仮定であるが,このような設定は興味深く,今後の研究の展開が期待できるものとなった. 3つ目の研究では,東北大学の横田巧氏と共同で,測度距離空間族における位相的有界性と順序的有界性の同値性について調査を行った.これについてGromovによって証明のアイデアのみが述べられた主張があり,我々はその主張に詳細かつより正確な証明を与えた.本研究をまとめた論文が2021年9月にGeom. Dedicataから出版された.
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