研究課題/領域番号 |
20J00197
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研究機関 | 国立民族学博物館 |
研究代表者 |
中村 友香 国立民族学博物館, グローバル現象研究部, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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キーワード | 南アジア地域研究 / 医療人類学 / 慢性の病い / 病いの語り / 糖尿病 / 先住民 / 改革運動 |
研究実績の概要 |
2020年度は主に、文献研究及び研究成果の発表を中心におこなった。まず、前年度までに実施した現地調査のうち、糖尿病患者の自己治療に関わる語りについて発表をおこなった。第54回日本文化人類学会では、特に糖尿病に関する語りが断片的に繰り返されていることを一種の経験の共有の方法として考察した。また、2020年度次世代育成セミナー・文化/社会人類学研究セミナーでは、糖尿病の自己治療と行為の責任に関わる語りに着目し口頭発表をおこなった。本研究の議論の深化のため、オンラインを通じてネパールのインフォーマントへのインタビュー調査を継続している。 第二に、ネパールにおける医療改革運動の様相について発表をおこなった。2020年度南アジアセミナーでは、特に医療改革運動がネパールの社会的包摂の一連の運動や現象と関連して、いかに位置づけられるかについて発表した。また、現代ネパールでの医療改革運動を、南アジア的なハンガーストライキの動きと、民族運動から大きくはみ出た人権の主張などが絡まり合うハイブリッドな運動として考察しIUAES (International Union of Anthropology and Ethnological Sciences)にて発表した。 第三に、研究対象地域である西ネパールの医療状況や社会文化的背景をより詳しく理解するために、当該地域に住む先住民族であるマガールの人々の保健医療状況や伝統医療に関する資料収集と文献研究に取り組んだ。それらのうちの、伝統治療師の社会的地位に関する調査の結果の一部を、ヒマーラヤ若手共同研究会で発表した。 このほか、前年度に研究成果を発表した糖尿病患者の薬剤とのかかわりに関する口頭発表について精査を加えStudies in Nepali History and Societyに論文を投稿し、採録が決定している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルスの蔓延のため、現地での調査を実施することができなかった。ただし、これまでの調査結果を分析し、分析の成果の発表をおこなうことができた。また、文献研究に加え、オンラインを通じたインタビュー調査により補足調査を実施し、研究課題についての理解を深化させることができた。以上のことから、研究成果の発信についてはおおむね順調であったものの、調査については計画と比較してやや遅れていると考える。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度は、文献研究とオンラインを通じたインタビュー調査、これまでの調査結果の分析と成果報告を活動の中心とする。 新型コロナウイルスの蔓延による現地調査の遅れは今年度もやむを得ないと考えている。本研究の対象者の多くは基礎疾患を持つ患者も多く特に慎重に執り行う必要があると考える。そのため、今年度の調査に関しては文献研究とオンラインを通じたインタビュー調査を中心とすることとする。また、日本国内に居住するネパール人への直接のインタビュー調査やネパールでの現地調査も状況が許せば万全の感染防止対策の上実施することを検討する。 研究成果報告については、10月のAnnual Conference on South Asiaにて糖尿病専門クリニックにおける生物医療と現地社会の接触と変容に関する発表をおこなうことを計画している。また、糖尿病患者の生活実践と治療の自己責任に関する語りについての研究を精査し、論文として投稿する予定である。
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