2021年度、報告者は『ネパールにおける近代医療の市場化―医療アクセス・薬剤・身体経験―』という研究課題について以下の活動を行った。 2021年度は主に、これまでの研究成果発表と日本国内における調査を行った。第一に、医療の市場化が著しいネパールにおいて、糖尿病患者らがいかに薬剤を購入しているのか、また薬剤が包摂する多様な意味とそれが自己治療に対して与える影響に関して論じた論文が掲載された。 第二に、身体経験に関する語りと、医療従事者との経験共有の在り方についてAnnual Conference on South Asiaで発表を行った。新型コロナウイルス感染拡大の影響でネパールでの現地調査を行うことは叶わなかったが、この点については国内において以下の調査を行った。まず、在日ネパール人を対象に、病いの経験や医療アクセス、医療従事者との関わりについてインタビュー調査を行った。医療通訳のボランティアを通じて医療現場における相互行為の在り方の観察調査も行った。また、物語の類型や場を共有するもの同士の相互作用による物語の変容等の在り方を理解するために、日本の語り部と呼ばれる人々の現代的実践について岩手県遠野市でインタビュー調査を行った。 第三に、西ネパールの医療状況や社会文化的背景をより詳しく理解するために、当該地域に住む先住民である、マガール及びタルーの人々の保健医療に関する資料収集及び日本国内におけるインタビュー調査に取り組んだ。 このほか、前年度までの研究成果を整理し、『病いの会話―ネパールで糖尿病を共に生きる』を京都大学学術出版会から出版した。
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