研究課題/領域番号 |
20J00219
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研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
楠見 友輔 立教大学, 文学部, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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キーワード | 創造性 / ポスト・ヒューマニズム / ニュー・マテリアリズム / 授業研究 / ポスト質的研究 |
研究実績の概要 |
採択課題『人間の高度な学習過程にみられる知識の創造のメカニズムの解明』における重要な理論的進展があった。事務局を務める「教育におけるポストヒューマニズム研究会」を令和3年度に月1回実施し、南アフリカの幼児教育研究者であるカリン・ムリスの『The Posthuman Child』を読み、ポスト・ヒューマニズムに関する理解が大きく進んだ。これをもとに、ポスト・ヒューマニズムを社会科学研究に応用するポスト質的研究に関する論文を執筆した。ポスト・ヒューマニズムは2010年以降の国際的な教育研究に影響を与えつつあるが、国内ではそのような動きは未だ生じておらず、本論文が採択されると大きなインパクトが見込まれる。第二に、ポスト・ヒューマニズムを用いた教育研究を進めた。令和3年度に実施した教員へのインタビューをもとに、知的障害のある子どもの学習と教材の関係を分析した研究を行い、インパクトファクターの高い国際学術誌に投稿を行った。第三に国内外の学会において、ポスト・ヒューマニズムの理論を用いて教育実践を再検討する学会発表を行った。7月に世界教育学会(WERA)において知的障害のある子どもの学習をポスト・ヒューマニズムの観点から捉え直す研究の口頭発表を行った。9月と10月には、日本特殊教育学会と日本質的心理学会において、ポスト・ヒューマニズムを用いた教育研究のシンポジウムを企画し、話題提供を行った。国際的な教育研究の動向を追いつつ、日本におけるポスト・ヒューマニズムを用いた教育研究を推進するための基盤を作る狙いがある。第四に、ポスト・ヒューマニズムと理論的な関係があるニュー・マテリアリズムの理論を用いて教育研究を拡張することを目指した研究会を立ち上げ、定例会を実施した。教員や若手の研究者の間で、新しい教育理論で教育実践を見るためのコミュニティを作ることを狙っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2021年度中に学校における調査を終了させる予定であったが、新型コロナウイルスの影響によって学校でのフィールド調査が困難となった。そのため、2021年度まではコロナ禍でも実施可能な理論研究とインタビュー研究を中心に研究を進めた。理論研究を重点的に行ったことによって創造性を分析するための基盤は整ったが、肝心のフィールドワークを通した実践データの収集が未だ進んでいない状況にある。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、新型コロナウイルスの影響を鑑みながら、可能であれば早期に調査を実施する。調査後、速やかにデータの文字起こしを行い、年度前半に複数の論文を国内学会に投稿する。年度後半には複数の学会で研究成果の発表を行う予定であり、既に申請を進めている。本年度から、1つの雑誌で二か月に一回の連載担当が決まっており、連載記事を通して、採択課題に関するこれまでの研究成果の発信と精緻化を行っていく予定である。既に執筆を終えた論文を、国内学会誌と国際学会誌に1本ずつ投稿中である。両論文の本年度内の採択を目指している。
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