令和4年度は、第一に、研究会の運営を通した研究課題に関する理論について検討を行うためのコミュニティづくり、第二に、学会における活動、第三に、研究結果の論文による発表の3点において、研究課題の進展とまとめを行った。第一については、月に1回のペースで、幼児教育においてポストヒューマニズム理論を応用する文献を講読する研究会を行った。また、月に2回のペースで、ニューマテリアリズムの立場から教育研究実践の検討を行う研究会の運営を行った。これらの研究会を通して、新しい視点から教育を捉え直すためのコミュニティ形成を行った。第二については、3つの学会で、ポストヒューマニズムやニューマテリアリズムの立場から、教育や障害学を議論するための、シンポジウム、ワークショップを実施した。学会での活動を通して、新しい理論を用いた教育研究について議論を行うための基盤を構築した。3年間の活動を通して、これらの理論を教育に適用することの意義について、一定程度の認知を得たことを実感している。第三については、本研究課題の成果をまとめ、国際学術誌にポストヒューマニズムやニューマテリアリズムの理論を応用する立場から、知的障害のある子どもの教材を用いた教育に関する論文を掲載した。物を中心に教育実践を分析し、教育成果を個人の能力の向上としてではなく、子ども―教材―教師の永続的な変化と捉える視点を示した。また、国内学術誌に、それらの理論をもとに質的研究を行う、ポスト質的研究の方法と方法論についての論考を掲載した。ポスト質的研究についての議論はこれまで日本においてはなされておらず、質的研究を更に発展させる上での学術的貢献を果たしたと考えている。
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