研究実績の概要 |
母親57名を対象にした頭部MRI構造画像,オキシトシン遺伝子メチル化レベル,共感性を測定する対人反応性指標との関連性を検討した。その結果,オキシトシン遺伝子上でプロモーター領域に位置する複数のCpGサイトのメチル化が,母親の共感性の中の個人的苦痛得点と正に相関することが見いだされた。さらに,当該領域のメチル化は母親の下側頭回の灰白質体積と負に相関することが認められ,遺伝子メチル化による脳構造の変化が,表現型としての母親の共感性に影響を及ぼすプロセスが考えられる。
初産かつ産後2か月の時点と参加者の性質を強く統制し,泣き声を聴取する心理実験課題およびMRI課題を実施した。心理課題では,事前に録音された参加者自身の泣き声,他者の子どもの泣き声,泣き声と類似の音響特性を持つノイズ音をランダムに聴取し,その直後にストループ試行を行った。泣き声に対するバイアスが強い養育者ほど,提示された文字と色が不一致の条件で認知資源を割かれ,反応時間が遅くなると予測される。MRI課題では,心理課題と同一の音声を25秒ずつ聴取し,その間の血流動態を撮像した。その個人差を説明する変数として,上記の共感性や遺伝子メチル化の指標を取得した。本年度は29名までの実験実施を完了し,次年度に40名までのデータ取得を完了する予定である。
休校による育児ストレスの増加と内容の理解および啓発活動として令和2年4月から複数回育児ストレスに関する質問紙や自由記述をクラウドソーシングサイトを通して配布し,休校前に比べて育児ストレスが有意に上昇していること,性差があり女性によりその増加が顕著であること,また増大した家事負担や一人で過ごす時間の欠乏がコロナ禍での育児ストレスの原因であることを明らかにした。
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