本研究の目的は、天体衝撃波からの高強度コヒーレント放射を第一原理数値シミュレーションを用いて解明することである。この放射は近年では高速電波バーストをはじめとした高エネルギー天体の放射機構として応用され、注目されている。この第一原理数値シミュレーションは膨大な数の粒子全てに対して運動方程式を解くため計算コストが極めて高いが、本研究は2022年度のHPCI若手課題として採択され、名古屋大学の「不老」を利用することで十分な計算資源を確保することができた。この成果は査読付き国際学術誌The Astrophysical Journalから出版されている。本年度は前年度から引き続き「富岳」成果創出加速プログラム「宇宙の構造形成と進化から惑星表層環境変動までの統一的描像の構築」に参加して富岳を利用し、イオン・電子系での3次元相対論的衝撃波計算を行った。この数値計算結果の解析はすでに終了しており、現在は投稿準備中である。 また、2021年9月から2023年3月までコロンビア大学のLorenzo Sironi助教のもとに長期滞在して、国際的な共同研究を行った。Lorenzo Sironi助教のポスドクであるEmanuele Sobacchi氏とも協力し、 共著論文として査読付き国際学術誌Monthly Notices of the Royal Astronomical Societyから出版した。さらに高強度コヒーレント放射と天体プラズマの非線形相互作用についての第一原理数値シミュレーションを行い、この成果は第一著者としてMonthly Notices of the Royal Astronomical Societyに投稿済みである。
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