粉体のようにマクロな粒子からなる系を圧縮していくと、ある密度で突然、有限の剛性を示すようになる。これがジャミング転移と呼ばれる現象である。本年度はこのジャミング転移に関する複数の研究を行った。以下で詳細を説明する。
[ジャミング転移における粒子分散の影響に関する研究] ジャミング転移の臨界指数は、粒子分散の有無に依存して異なる値を取ることが知られていた。この現象を理論的に説明するために、解析的に解ける平均場模型を構築し、計算を行なった。その結果、粒子分散が有限である時には、ジャミング転移点近傍でレプリカ対称性と呼ばれる対称性が破れることが明らかになった。一方で、分散が0である時には、レプリカ対称性は保たれる。この違いこそが、臨界指数の違いを説明することが明らかになった。
[ジャミング転移点近傍での粒子変位に関する研究] ジャミング転移点にむけて、高密度側から近づいた際の臨界的な振る舞いについては、既に多くの研究がなされている。一方で、低密度側から、転移点に向けて圧縮していったときの振る舞いについては比較的理解が進んでいない。本研究では、準静的に転移点まで圧縮して行った時の構成粒子の変位の振る舞いを、3次元の数値シミュレーションを用いて系統的に調べた。その結果、変位の平均二乗変位は、転移点に向けてベキ的に発散することが明らかになった。このことは、平均二乗変位が、転移の臨界性を特徴づける良いオーダーパラメーターになっていることを意味している。また、Participation Ratioと呼ばれる量を用いた解析から、転移点直上で、粒子の変位ベクトルは非自明なフラクタル構造を持つことが明らかになった。
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