最終年度は主に希釈冷凍機温度での表面弾性波共振器の評価,収束型表面弾性波共振器の開発,光共振器の測定系の構築と評価を行った. 希釈冷凍機での測定については表面弾性波共振器における電気抵抗やフォノンーフォノン散乱に由来するロスを抑制することを目的として行なった.実際に室温環境下と比較して圧電バルク材料・圧電薄膜材料を用いたデバイスの両方でQ値の改善がみられ,100usecを超える寿命を達成した. 収束型表面弾性波共振器は変換器の変換効率を増強するために共振器のモード体積の極小化を目的として行なった.収束型の共振器は光共振器内部のレーザーの固有状態であるガウシアンビームモードを模倣してデバイスをデザインするが,実際に測定される共振モードはこれまで偶発的で基本モードや高次モードといった異なるモードとの結合がコントロールできておらず,デバイスデザインの方針が明らかではなかった.デバイス構造ののさまざまなパラメータを系統的に変えながら作製することで,基本モードと高次モードを選択的に励起できる共振器構造を明らかにした.またモード分布を光学イメージングによって測定し,波長スケールにモードを収束できること,高次モードでは理論から予想されるような位相反転が生じることを明らかにした. 光共振器の測定については低温環境下での測定が可能になるようにグレーティングカプラをもつ光導波路と結合した光共振器を作製した評価を行った.光学測定系を構築し,リング共振器とフォトニック結晶共振器について室温下での測定を行ったところQ値が10^5を超えるデバイスを作製できた.グレーティングカプラの周波数依存性や希釈冷凍機内での固定用接着剤による屈折率変化を明らかにして表面弾性波共振器との結合系実現のためのデバイス最適化を行なった.
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