研究課題/領域番号 |
20J00363
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研究機関 | 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター |
研究代表者 |
酒井 了平 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 神経研究所 疾病研究第四部, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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キーワード | リソソーム / オートファジー / 脂質分解 |
研究実績の概要 |
リソソームによる細胞内分解システム「オートファジー」には、マクロオートファジーを含む4つの形態が存在する。これまで、マクロオートファジーに関しては精力的に研究されてきた。ところが、その他の非典型的オートファジーに関する分子機構や普遍性の多くは解明途中にあるため、リソソームそのものの機能解明が強く求められている。また、オートファジーによる分解基質の研究対象は、殆どがタンパク質であり核酸・脂質の分解機構の解明は遅れている。 当研究室では、これまでに核酸を標的とし新しい非典型的オートファジー経路を発見し研究が進められてきた。その研究過程において、採用者はマクロオートファジー非依存的に脂肪滴内の脂質がリソソームで分解されることを発見し、その制御因子を同定し、脂質を基質とする新規オートファジーの経路の存在が示唆された。 そこで、新規脂質分解の細胞内システムの解明を目的とし、リソソーム分解阻害剤を用いることで新規脂質分解の場がリソソームであることを突きとめた。また、マクロオートファジー必須因子ノックアウト細胞およびマクロオートファジー阻害剤を用いて、既知の分解系とは異なる新規システムであることを示唆するデータを得た。さらに、標的因子ノックダウンにおける脂質分解阻害率と、リソソーム内の脂質分解酵素ノックダウンにおける脂質分解阻害率、上記二因子のダブルノックダウンによる脂質分解率をpuls-chase実験を用いて定量的に比較したところ、新規脂質分解はリソソーム内の脂質分解酵によるものであることを突き止めた。現在は、標的因子のアミノ酸変異体を用いた過剰発現系の実験を用い、さらなる詳しい分解機構の解明に取り組んでいる。また、in vivo解析においては標的因子トランスジェニックマウスを作製し、高脂肪食飼料投与に伴う生活習慣病病態モデルマウスの解析に取り組んでいる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、新規脂質分解の細胞内システムの解明を主に行なった。その結果、新規脂質分解の場がリソソームであるが、マクロオートファジー経路ではない事、さらにリソソーム内脂質分解因子が関与することから、新規脂質分解経路が、新規オートファジー経路であることを見出し、順調に研究が進展している。さらに、トランスジェニックマウスを作成し、高脂肪食飼料投与に伴う生活習慣病病態モデルマウスの解析に取り組んでいることから、当初の予定であったトランスジェニックマウスの解析を一年前倒しに研究が進んでいる。以上のことから、本研究の進捗状況はおおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、新規脂質分解の細胞内システムの詳細なメカニズム解明を進める予定である。まず、標的因子のアミノ酸変異体を用いた過剰発現系の実験を用い、分子レベルでの制御機構を解明する。また、新規脂質分解における脂肪滴とリソソームの接触部位の解析を行うため、電子顕微鏡を用いた画像解析を行う予定である。 さらに、新規分解システムの生理的意義を解明も進める。具体的には、標的因子トランスジェニックマウス用いた、高脂肪食飼料投与に伴う生活習慣病病態モデルマウスの解析を行う。さらに、高脂肪食負荷により誘導される肥満が引き起こす、炎症応答と標的因子の関係を明らかにする。
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