スピンカロリトロニクスは、電子の持つ電荷とスピン角運動量自由度を扱うスピントロニクス分野に熱という要素を融合させた学術分野であり、ここ十数年で急速に世界中で発展した研究領域である。本研究では、外場による物性制御を通し、スピンカロリトロニクス分野に不足している能動的な熱制御原理・機能を創出することを目標としている。 本年度では、磁性体における縦型磁気熱電効果である異方性磁気ゼーベック効果・異方性磁気ペルチェ効果の出力増強を目指し実験を行った。前年度の成果でも利用したNiを母材とし、大きなスピン軌道相互作用を有するPtの添加濃度を0~20%まで変えた試料を用意した。磁場印加あり/なしの時におけるゼーベック係数のを正確に測定し、その異方性(異方性磁気ゼーベック効果の大きさに相当)を算出することで異方性磁気ゼーベック効果のPt濃度依存性・温度依存性を評価した。結果、Pt添加5%の試料が最大の異方性磁気ゼーベック効果を示し、温度が上昇することでその大きさが減少することが分かった。その過程で、Pt添加15%の試料では異方性>>ゼーベック係数が実現できることも発見し、スピンカロリトロニクス現象の高性能化の指針を得ることに成功した。本成果はApplied Physics Express誌に掲載された。
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