TNBCの発症や予後にYB-1が関与することが示唆されるがYB-1の発現上昇や活性化メカニズム、YB-1の治療標的としての有用性は明らかにされてこなかった。前年までの検討で、リン酸化YB-1自身がTNBCにおいて治療標的となり得ることが示されたため、今年度はリン酸化YB-1とTNBC治療感受性との関連について明らかにするため検討を行い、以下について明らかにすることができた。 1.YB-1リン酸化阻害時のTNBC治療薬であるパクリタキセルの感受性について検討を行ったところ、YB-1リン酸化阻害薬とパクリタキセルの併用は相乗的な細胞増殖阻害効果を示した。 2.YB-1恒常リン酸化体を用いパクリタキセル感受性について検討したところ、不活化型YB-1強制発現細胞に比べて恒常リン酸化型YB-1強制発現細胞においてパクリタキセル耐性が誘導された。さらに、恒常リン酸化型YB-1強制発現細胞においてYB-1標的因子(Cyclin B/D/E、MDR1)の発現が不活化型YB-1強制発現細胞に比べて有意に増加していた。 3.臨床検体を用いた検討において、原発巣でのリン酸化YB-1発現が生存率及び再発と有意な相関があることが観察された。さらに、免疫染色を用いた検討により、リン酸化YB-1発現とERK/RSKシグナルの下流因子であるS6のリン酸化が相関することが観察された。 以上の本研究において、基礎研究及び臨床検体を用いた検討により、TNBCにおいてリン酸化YB-1が有効な治療標的であることを示すことができた。
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